訪問看護は担当制?受け持ち制とチーム制の違いやメリット・デメリットについて解説
「受け持ち制やチーム制って、なんだろう?」「どちらの看護体制が働きやすいの?」と疑問に思っている人もいるのではないでしょうか。
訪問看護ステーションの看護方式には「受け持ち制」と「チーム制」があります。
この記事では、訪問看護における受け持ち制とチーム制の説明や、それぞれのメリット・デメリット、向いている人の特徴ついてまとめています。
また、看護方式以外で訪問看護ステーションを選ぶポイントについても紹介しています。訪問看護への転職を考えている人は、ぜひ参考にしてください。
訪問看護の受け持ち制とチーム制とは
訪問看護は、看護師が利用者さまのご自宅を訪問し、看護や療養上のサポートなどをすることです。訪問看護ステーションの看護方式には、主に「受け持ち制」と「チーム制」の2つのタイプがあります。どちらの看護方式を採用するかは、訪問看護ステーションによって異なります。
まず、ここでは訪問看護の受け持ち制とチーム制について、分かりやすく解説していきましょう。
受け持ち制は担当を決める
受け持ち制とは、1人の利用者さまに対し1人の訪問看護師が担当する看護方式です。訪問看護計画の立案・評価、ケアの実施など、一連の業務を担当の看護師が行います。
利用者さまが訪問看護を利用している間は、同じ看護師が継続して担当することが一般的です。
チーム制は全員で訪問する
チーム制とは、訪問看護ステーションで働く看護師を、いくつかのチームに分けて各チームが特定の利用者さまを担当する看護方式です。
訪問看護計画の立案から実践まで、チーム内で行います。オンコールの緊急対応をチーム内でしている訪問看護ステーションもあるようです。
チーム制では、チームそれぞれに統括するリーダーを決めます。リーダーは経験年数や能力、専門分野などを考慮し、メンバーを指導し、日々の訪問業務を調整することが役割です。
また、このチーム制に近い受け持ち方式として、訪問看護ステーション全員でランダムに利用者さまを受け持つというところもあります。
大体の訪問看護ステーションの看護師の人数は5人以下であり、規模の小さいことから「みんなで利用者さんを担当する」という体制をとっているのです。
ランダムに利用者さまを看ていくことで、偏りのないアセスメントができ利用者さまとの距離感を維持し、依存関係が発生しにくいというメリットもあります。
訪問看護の受け持ち制のメリットとデメリット
受け持ち制、チーム制どちらにもメリットとデメリットがあり、各訪問看護ステーションはスタッフや特色を活かせる方式を選択しています。
はじめに、受け持ち制のメリットやデメリットについて紹介します。
受け持ち制のメリット
訪問看護の受け持ち制のメリットは以下のとおりです。
- 変化に気づきやすい
- 情報伝達のミスがない
- 利用者さまと信頼関係を築きやすい
- スケジュール管理しやすい
それぞれについて解説します。
変化に気づきやすい
受け持ち制では1人の利用者さまと関わる回数が多いため、利用者さまの普段の状態を詳しく把握しやすいです。
わずかな状態の変化にも気づきやすいため、利用者さまは安心感を抱きます。ただし、利用者さまの変化に気づく観察の能力が看護師には必要です。
情報伝達のミスがない
関わる人が多ければ伝達にミスが起きやすいものです。
訪問看護では、利用者さまへのケアの方法やコミュニケーションの取り方など、情報が多いため、正確な共有が難しいです。さらに、関わるスタッフが多いと、伝達ミスも多くなります。
しかし、受け持ち制であれば、他のスタッフに伝達する必要がないため、情報伝達のミスで悩むことが少ないでしょう。
利用者さまと信頼関係を築きやすい
受け持ち制では、担当の利用者さまと信頼関係を築きやすいです。1人で利用者さまを担当するため、初回から継続して会う機会が多いからです。
利用者さまは要望を話しやすくなるため、ケアに利用者さまのニーズを反映しやすくなります。そして、いつも同じスタッフが訪問するため、利用者さまも安心感を得やすいです。
スタッフが訪問スケジュールを管理しやすい
訪問する利用者さまが決まっていると、時間の管理がしやすいです。毎回、訪問する利用者さまが異なると、訪問時間の確認を都度しなければいけません。
担当が決まっていると時間もほぼ一定であることが多いため、スタッフ自身が訪問スケジュールの管理をしやすくなります。時間管理のミスが少なくなるでしょう。
受け持ち制のデメリットと対処法
訪問看護の受け持ち制のデメリットは以下のとおりです。
- 依存しやすくなる
- 休みづらい
- 他スタッフの対応が難しい
それぞれのデメリットと、対処法について解説します。
依存しやすくなる
長い期間、同じスタッフだけが訪問していると「他のスタッフの訪問は避けてほしい」と利用者さまに要望されることが稀にあります。スタッフへの利用者さまからの依存が強いと、担当スタッフの負担が大きくなってしまうでしょう。
利用者さまの依存心が大きくならないように、初回の訪問時から、緊急時などは受け持ち制でも他のスタッフも関わることがあると、事前に利用者へ伝えておくとよいです。
また、訪問看護に依存しない、利用者さまとご家族の自律を促すケアをすることも必要です。
休みづらい
受け持ち制の場合、他のスタッフに負担をかけると気にかけ、担当スタッフは休みを取りにくくなることがあります。
担当スタッフが休むとき、利用者さまと関わりが少ない他のスタッフに、代行を頼まなければならないからです。ケアの手順や方法などがしっかり把握できていないと、担当スタッフも、訪問を代行するスタッフも心配になります。
他のスタッフが心配なく訪問できるようにするには、マニュアルの作成や情報の共有を日頃からするとよいです。受け持ち制の場合であっても、他のスタッフが代行できるような体制をつくることは大変重要です。
緊急時に他スタッフによる対応が難しい
受け持ち制の訪問看護では、担当者以外のスタッフが利用者さまの情報を把握できていないことがあります。しかし、24時間対応のオンコールでは、担当者以外のスタッフでも対応しなければいけません。
緊急時に担当者以外のスタッフが対応できるように、担当スタッフは利用者さまの情報を他のスタッフに伝えておくことが必要です。現在では、電子カルテを使い、効果的に情報を共有しているステーションも増えています。
訪問看護のチーム制のメリットとデメリット
次に、数人の看護師で利用者を担当するチーム制のメリットとデメリットについて紹介します。
チーム制のメリット
訪問看護のチーム制は以下のとおりです。
- 違う視点でアセスメントできる
- 急な休みに対応できる
それぞれ解説します。
違う視点でアセスメントできる
さまざまな経験やスキルをもつスタッフが関わるため、それぞれの視点で利用者さまをアセスメントできます。利用者さまに対する理解が深まり、より包括的なケア計画を立てられます。
スタッフの急な休みに対応できる
チーム制では、複数のメンバーがいるため、スタッフの急な休みや欠員に柔軟に対応できます。スタッフ同士が連携しフォローすることで、利用者さまに継続したケアの提供が可能です。
チーム制のデメリットと対処法
次に訪問看護のチーム制のデメリットについて紹介します。
- 情報が伝わりにくい
- 信頼関係を築くのに時間がかかる
対処法についても解説するので、参考にしてください。
情報が伝わりにくい
訪問看護のチーム制におけるデメリットは、情報伝達に漏れが生じやすいことです。複数のメンバーが関わるため、正確な情報共有が難しくなります。
情報伝達の漏れを防ぐためには、チームメンバー全員で情報を共有できるカンファレンスの機会をつくるとよいです。また、定期的なカンファレンスだけでなく、毎日の朝礼時に情報交換をする時間をつくっている訪問看護ステーションもあるようです。
利用者さまと信頼関係を築くのに時間がかかる
訪問看護のチーム制のデメリットは、利用者さまとの信頼関係の構築に時間がかかることです。数人のスタッフが交替で対応するため、利用者さまは頻繁に新しいスタッフに接することになり、信頼感を築くのが難しくなります。
チーム制でも利用者さまとできるだけ早く信頼関係を築くためには、同行訪問がおすすめです。同じチームのスタッフと一緒に訪問することで、現場で情報を伝えることもでき、利用者さまを把握しやすくなります。
受け持ち制が向いている人の特徴
訪問看護ステーションで働くときに「受け持ち制」「チーム制」どちらが自分に合っているか気になるでしょう。
まず、ここでは、受け持ち制の訪問看護が向いている人の特徴について紹介します。
- 資格を持っている
- 自分の看護観で仕事したい人
- マニュアル作りが上手い人
資格を持っている人
専門的な資格を持っている看護師は、受け持ち制が向いているといえます。
受け持ち制では、利用者さまの健康上の問題に合わせ、スタッフが取得している資格を活かしたケアが可能です。例えば、褥瘡のある利用者さまには、皮膚・排泄ケア認定看護師、認知症のある利用者さまには認知症ケア認定看護師が担当します。
スタッフが身につけているスキルを最大限に活用でき、より質の高いケアを提供できます。
自分の看護観で仕事したい人
看護ケアには、自分の看護観が反映されます。看護観とは、「看護師として自分は患者さまにどのような看護を行うか」についての考えのことです。看護観は看護師個人によって異なり、立場や状況によって変化するものでもあります。
受け持ち制では、担当者は自分の看護観でケアを決め、実施できます。自分の考えでケアをできるため、やりがいを感じやすいです。
マニュアル作りが上手い人
受け持ち制では、担当者以外でも問題なくケアできるように、分かりやすく詳細に書かれたマニュアルが必要となります。受け持ち制であっても、担当者の休みの日や緊急時には、担当者以外のスタッフがケアすることがあるからです。
どのスタッフが見ても一目で理解できるマニュアルが求められます。上手くマニュアルを作れる人は、受け持ち制に向いているでしょう。
チーム制が向いている人の特徴
つぎに、チーム制の訪問看護に向いている人の特徴について紹介します。
- 看護スキルに自信がない人
- チームで協働することが好きな人
- 柔軟性あるシフトが良い人
看護スキルに自信がない人
看護スキルに自信がない看護師は、チーム制が向いているでしょう。
チーム制であれば、知識やスキルをお互いにフォローできます。1人で看護を展開するのではないため、安心感を得られます。
チーム制は他のスタッフと協働することで、学びながら成長でき、ミスやリスクも減らせます。新人や経験が少ない人に、向いている看護方式といえるでしょう。
チームで協働することが好きな人
チーム制は、協働して働くことが好きな看護師に向いています。チームで協力しながら働くことで、やりがいや喜びを感じやすいです。
チームの中で生まれる連帯感は、モチベーションアップにもなり、業務の効率化も図れます。利用者さまへのケアにも良い影響を与えるでしょう。
柔軟性あるシフトが良い人
プライベートの時間の取りやすさを求める人は、受け持ち制に比べ、チーム制の方が向いています。チーム制であれば、勤務当日の急な休みにも対応しやすいです。
たとえば、子育てや介護をされている方には、柔軟性のある働き方が向いています。
自分のライフスタイルに合わせ、仕事とプライベートを両立しやすいでしょう。
受け持ち制・チーム制以外で訪問看護ステーションを選ぶポイント
訪問看護ステーションへの転職を考えたとき、看護方式以外にも働きやすさを左右するポイントがあります。
自分に合った訪問看護ステーションを見つけるために、以下のポイントを参考にしてください。
- 勤務希望を出しやすいか
- スタッフの雰囲気がよいか
- 相談しやすい管理者がいるか
- スキルアップしやすい環境があるか
- 無理なスケジュールを組んでいないか
それぞれについて解説します。
勤務希望を出しやすいか
勤務希望が出しやすいと、長く働き続けやすいです。スタッフが少なくて、勤務希望を出しにくく、休日出勤が多いという訪問看護ステーションも少なくありません。
仕事とプライベートを両立して働き続けるためにも、勤務希望を出しやすい訪問看護ステーションを選ぶことをおすすめします。
また、時短勤務やフレックスタイムなどの勤務体制がある訪問看護ステーションであると、自分のライフイベントに合わせた働き方も可能です。
スタッフの雰囲気が良いか
訪問看護ステーションを選ぶときには、スタッフの雰囲気をみて、自分に合った働きやすい環境かどうか選ぶことをおすすめします。
スタッフの雰囲気が良い訪問看護ステーションは、コミュニケーションを多くとり、協力し合って仕事しています。良い雰囲気があると、仕事へのモチベーションも上がるでしょう。
相談しやすい管理者がいるか
相談しやすい管理者がいるかは、訪問看護ステーション選びで重視したいポイントです。業務のことで悩むことがあっても、管理者に相談しにくいからという理由から自分で判断していると、ミスやトラブルにつながります。
もちろん管理者だけでなく、他のスタッフにも相談しやすい訪問看護ステーションがおすすめです。相談しやすい訪問看護ステーションであるかの確認は、面接や見学を通して、実際に働いているスタッフに聞いてみましょう。
スキルアップしやすい環境があるか
スタッフのキャリアアップを積極的に図っている訪問看護ステーションは、働きやすく質の高い職場といえるでしょう。
現場での教育だけでなく、学会や研修会の受講などをすすめている、資格取得への補助制度も設けているといった訪問看護ステーションをおすすめします。
キャリアアップは、自分のスキルや知識に対する不安を減らし、仕事へのモチベーションを上げるものです。スタッフのキャリアアップが支援さているか確認することも、訪問看護ステーション選びのポイントです。
無理なスケジュールを組んでいないか
日頃のスケジュールの組み方を知ることは、訪問看護ステーションを決めるときに確認したい大切なポイントです。スケジュールの組み方によっては、スタッフに大きな負担がかかるからです。
「移動の時間を休憩時間にしている」「明らかに残業になるスケジュールをスタッフと相談せずに組んでいる」「移動時間にほとんど余裕がなく、焦ることが多い」といったスケジュールであると、スタッフに疲労を蓄積させます。また、ミスやトラブルを引き起こす原因となります。
働きやすい訪問看護ステーション選びには、スタッフの働き方を重視したスケジュール調整をしているかを重視して選ぶことをおすすめします。
まとめ
訪問看護ステーションの看護方式には、受け持ち制やチーム制があります。受け持ち制は1人の利用者さまにつき、1人のスタッフが担当する方式です。一方、チーム制は数人のスタッフが1人の利用者さまを担当します。
どちらの看護方式にもメリットとデメリットがあります。メリットだけでなく、デメリットについても理解し、自分に合った訪問看護ステーションを選びましょう。
また、他にも働きやすい訪問看護ステーションを選ぶときのポイントがいくつかあります。記事で紹介しているため、訪問看護ステーションへの転職を考えている人の参考になれば幸いです。
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