看護師の退職で強い引き止めにあう理由10選!退職しやすい理由を解説
「訪問看護ステーションに転職したいけど強く引き止められる」「引き止められても、お世話になったから円満に退職したい」など悩んでいる看護師の方は多良いでしょう。
看護の現場は多忙であり、かつ人手不足の状況です。実際に、厚生労働省が公開した調査によると、2022年度の看護師・准看護師の有効求人倍率は2.20倍です。ほかの職業が1.19倍であるため、人手不足であるといえます。
訪問看護ステーションや病院は人員を減らしたくないため、退職を強く引き止めるケースがあります。
そこで、看護師の退職で強い引き止めにあう理由10選と退職しやすい理由を紹介します。職場に迷惑をかけず、円満に退職したい方は参考にしてください。
看護師の退職で強い引き止めにあう理由10選
まず、看護師の方が退職を伝える際に強く引き止めにあう理由を解説します。
- 訪問看護ステーションや病院内の人間関係の不満
- 給料の不満
- オンコールや夜勤の不満
- 残業の不満
- 休みや有給休暇の不満
- 勤務希望が通らないことへの不満
- 福利厚生への不満
- 看護師が不向きであることを自覚
- ミスが多いことによる自信喪失
- 責任の重さを自覚
それぞれ、なぜ引き止められるのか具体的にみていきます。退職を申し出た際に強く引き止められる可能性があるため、これらの理由は使わないほうが良いでしょう。
1.訪問看護ステーションや病院内の人間関係の不満
職場の人間関係が退職の理由であると伝えると強く引き止められます。
なぜなら、上司が調整すると問題を解決できる場合があるためです。たとえば、相性が悪い方と勤務をずらしたり、自身が異動したりすると解決できるかもしれません。そのため、上司は引き止めやすくなります。
しかし、特定の名前をあげると相手に伝わり、退職日までの期間、働きにくくなる恐れがあります。スムーズに退職したい看護師の方は、人間関係の不満は伝えないようにしましょう。
2.給料の不満
給料の不満を伝えると、昇給を理由に強い引き止めにあう可能性があります。
その理由は、新しい人材を採用し教育するよりもコストがかからないためです。看護師長などから「給料に見合う働きをしているのか?」と問われるかもしれません。嫌な思いをするだけではなく、印象を悪くします。
昇給できた場合でも、見合う成果を出せなければ、プレッシャーを感じるでしょう。また、周囲から「なぜ〇〇さんだけ昇給できたの?」など疑問を持たれると、働きにくくなる恐れがあります。
そのため、給料の不満は伝えるべきではないでしょう。
3.オンコールや夜勤の不満
実際に、オンコールや夜勤の負担から退職する看護師の方は少なくありません。
オンコールや夜勤の不満を伝えると「オンコールの業務をしなくてもいいよ」「夜勤業務がない勤務に変更しよう」などといわれ、強い引き止めにあう恐れがあります。
オンコールや夜勤がなくなると、身体の負担は減るでしょう。しかし、夜勤をすると平日に外出でき、人混みを避けられるなど、夜勤明けの時間を有効活用できるメリットもあります。
看護師の方は、夜勤明けの過ごし方に慣れている場合も多いため、オンコールや夜勤がなくなると、自分の時間がなくなるかもしれません。
また、夜勤やオンコールの手当てがなくなるため、必然的に年収が減ります。
そのため、オンコールや夜勤の不満を伝えるのではなく、一度考え直したほうが良いかもしれません。
4.残業の不満
残業への不満を伝えると「業務を改善するまで待ってほしい」「残業のない勤務形態に変更する?」などと言われ、強い引き止めに合うかもしれません。
しかし、実際に残業が免除となっても効果は一時的です。慢性的な人手不足の現場では、業務の改善は難しく、時間が経つと再び残業に悩むでしょう。
5.休みや有給休暇の不満
休みが少なく、有給休暇を取得できないことが理由で退職する看護師の方もいます。
実際に、日本看護協会が公開した「2022年病院看護・助産実態調査報告書」によると、看護職員の有給休暇の取得率は65%です。多忙な職場では、取得率がもっと下がるかもしれません。
休みや有給休暇への不満を伝えると、「何日休みが欲しいの?」「何日休んだら辞めない?」などと言われることがあります。
退職の話ではなく休みの話にすり変わり、話がスムーズに進まない恐れがあるため、休みや有給休暇の不満を伝えるのは、別の機会にしましょう。
6.勤務希望が通らないことへの不満
勤務希望が通らないことを伝えると「〇日間は希望を出して良いことにしよう」「休みの希望を出しても良いから辞めないで」といわれ、強い引き止めにあうかもしれません。
口約束のみでは、その効果は一時的です。人手不足や勤務の煩雑さを理由に、勤務希望を聞き入れてもらえないかもしれません。
7.福利厚生への不満
訪問看護ステーションや病院の福利厚生は、簡単に増やせません。
しかし、退職する理由としては弱く、上司は納得しないでしょう。「新しい方が見つかるまで待ってほしい」など引き止めにあう恐れがあります。
8.看護師が不向きであることを自覚
経験が浅い看護師の方が退職する理由に多いのは「不向きであることの自覚」です。
経験が浅い看護師の方であれば、誰でも感じることです。そのため、数年の経験で向き・不向きを判断するには早いかもしれません。「もうちょっと頑張ってみよう」「あと3ヶ月もしたら慣れるから大丈夫」などと言われ強い引き止めにあうでしょう。
9.ミスが多いことによる自信喪失
先輩に怒られ精神的なダメージを受け、看護師を続けることへの不安を強く感じ、退職を考えることもあるでしょう。
経験年数にかかわらず、誰でもミスする可能性があり、ほかの看護師の方もミスを乗り越え成長しています。
看護師長などは、このことをよく知っているため「誰でもミスするものだよ」「一緒に対策を考えよう」などと言い強く引き止める恐れがあります。
10.責任の重さを自覚
看護師の業務は、自分のミスが患者さまに大きな影響を与える、という責任を負いながら日々取り組んでいます。
ヒヤリハットの体験や患者さまの死に直面した経験などから、責任の重さをあらためて自覚し、退職を考えます。「受け持ちの数を減らそう」「責任を感じるのはどこの施設でも同じだよ」などいわれ、引き止められるかもしれません。
看護師の退職で「強い引き止め」を断りやすい理由|退職しやすい理由
看護師が不足していることや看護師長自身が評価を下げたくないなどの理由から、退職する看護師の方を強く引き止めます。
円満退職したい看護師の方にとっては、強く引き止められたとき、どのように対応すべきか悩みます。そのため、下記の理由を伝えてください。
- ほかの訪問看護ステーションや病院への興味のため
- 体調不良のため
- 家庭の事情のため
- ライフステージの変化のため
- キャリアアップ・スキルアップを目指すため
強い引き止めを断りやすい理由をそれぞれみていきましょう。
ほかの訪問看護ステーションや病院への興味のため
ネガティブな理由ではなく、ポジティブな理由であると引き止めにくいでしょう。
日本看護協会の調査によると、看護師の方が退職する理由の4位が「他施設への興味」で15.1%を占めます。学びたい分野があることや、資格取得への熱意を伝えましょう。
ただし、異動すると学べたり、院外研修で経験できたりするのであれば、異動や研修受講を勧められるかもしれません。
病棟の看護師の方は「訪問看護ステーションで学びたい」「介護施設で働きたい」など具体的に伝えてください。「ほかの施設でしか学べないことがある」「ここでは学べない分野がある」ことをアピールすると、引き止められないばかりか応援されるでしょう。
体調不良のため
体調不良であり、療養に専念したいことを伝えると理解を得られやすいです。
看護師の業務は生活リズムが不規則であり、体調を崩しやすいです。体調不良を理由に退職する場合は、診断書の提出が必要な場合があるため事前に準備しておきましょう。
とはいえ、「病気ならとりあえず1ヶ月休む?」「体調が回復したら復帰したら良いよ」など強い引き止めにあう恐れがあります。そのため、仕事を続けられない状況を理解してもらいましょう。
家庭の事情のため
家族の引っ越しや親の介護など、退職理由が家庭の事情であると引き止めにくいです。
上司も「引っ越しなら仕方ないか」と受け入れざるを得ません。
しかし、親の介護が理由であると「介護休暇を申請して、落ち着いたら働く?」と善意で勧められることもあります。
介護と仕事を両立したい方は、介護休暇を利用するのもひとつの手です。退職を希望する方は、介護の状況を説明し、両立の難しさをしっかり伝えてください。
ライフステージの変化のため
先の資料で紹介したように、看護師の退職理由は1位が「出産・育児のため」で22.1%、2位が「結婚のため」で17.7%です。
多くの看護師の方が、ライフステージの変化により退職しています。身体的、精神的にハードであり、妊娠中に働くのは難しいと考える方もいます。
そのため、ライフステージの変化による退職理由であると、円満退職しやすいでしょう。
キャリアアップ・スキルアップを目指すため
資格を取得したいなど、キャリアアップやスキルアップは前向きな退職理由です。
自分がしたいこと、足りないことを見つめ直し、看護師として成長するための退職であると伝えましょう。ただし、現在の職場でも目指せる場合は、強い引き止めにあう恐れがあります。
仕事との両立はできないこと、スキルアップに専念したいことなど具体的に伝えましょう。
そもそも病院や訪問看護ステーションは看護師の退職を拒否できない
そもそも病院や訪問看護ステーションは、退職を拒否できません。退職意思を示すのは個人の自由であり、強く引き止められないのです。
引き止めるのは病院や訪問看護ステーション側の都合であり、以下の事情が考えられます。
- 現場が人手不足である
- 新規募集にはコストがかかる
- 看護師長が評価を下げたくない
仕事に慣れた看護師を失うのは、大きな痛手です。話し合いを重ね、退職を回避しようとします。
退職する2週間前であれば退職を拒否できません。しかし、就業規則で「退職は〇ヶ月前に申告するように」と書かれています。
民法627条によると、「解約の申入れの日から2週間を経過すると終了する」とされています。
そのため、法的には2週間後に退職できますが、円満退職を目指す場合は就業規則に従ったほうがい良いでしょう。
新卒・新人看護師は退職を強く引き止められやすい
新卒・新人看護師も退職すると決めたら、強く引き止められたり、反対されたりせずに退職したいと考えるでしょう。
しかし、実際は「3年は働いたほうが良いのでは?」「看護技術も知識も不十分で、次の仕事を見つけるのは大変だよ」などと強く引き止められる恐れがあります。
新卒・新人看護師の方であれば、説得すると退職の意思を変えやすいと思われており、退職できないケースがあります。辞めたい気持ちのまま、仕事を続けるのはストレスです。
そのため、次の転職先を決めたうえで退職の意思を伝えましょう。ポジティブ、かつ具体的であると強い引き止めにあわず、円満な退職につながります。
看護師の退職で強い引き止めにあっても円満退職する方法
看護師の方は、退職の際にできるだけ嫌な思いをせず、トラブルなく退職したいと考えるものです。ここでは、強い引き止めにあっても円満退職できる方法を6つ解説します。
- 退職する意思をしっかり伝える
- 退職しやすい時期を検討する
- 退職を早めに伝える
- 後任者に適切に引継ぎをする
- 看護部長や人事部長に相談する
- 転職サイトや退職代行サービスで退職交渉する
それぞれの方法を具体的にみていきましょう。
退職する意思をしっかり伝える
退職する意思をしっかり伝えると、強い引き止めにあっても円満退職できるでしょう。
意思が固いことをしっかりアピールしてください。相談するスタンスで話し合いに臨むのは控えましょう。
退職者が出ると人員の補充が必要となり、新しい人材を探さなければなりません。退職の意思があいまいで、迷っている素振りが伝わると、強く引き止められる恐れがあります。
そのため、相談ではなく決定事項として強い意思を伝えてください。
退職しやすい時期を検討する
退職しやすい時期は年度末です。
なぜなら、年度末は訪問看護ステーションや病院内で異動や退職者が決定する時期であり、次年度に向けて看護師の編成を考える時期でもあるためです。
あなたが辞める前提で編成を組めるため、勤務先の負担を軽減できるでしょう。
しかし、年末で病院が忙しい時期や、転職希望者が少なくなる4月の退職は避けてください。円満な退職を目指す場合は、年度末のタイミングがおすすめです。
退職を早めに伝える
なるべく早めに退職を伝えましょう。
法的には2週間前であれば問題ありませんが、訪問看護ステーションや病院ごとの就業規則に従ったほうが円満退職しやすいです。
人員を補充したり、ほかの看護師の方に役割を振ったりなど調整しなければならないため、2週間前に伝えるのは現実的ではありません。
さらに、勤務表がすでに作成されているため、ほかの看護師の方に迷惑がかかります。そのため、退職は早めに伝え職場にできるだけ迷惑をかけないようにしましょう。
後任者に適切に引継ぎをする
強い引き止めにあっても円満退職するためには、後任者への適切な引き継ぎも大切です。
引き継ぎの資料を準備したうえで説明してください。資料があれば退職後にも見返せるため後任者が困りません。
後任者も勤務しながら引き継ぎを受けるため、スケジュールには余裕を持っておこないましょう。
看護部長や人事部長に相談する
看護師長などに退職を申し出ても、受け入れられない場合は看護部長や人事部長に相談しましょう。
本来であれば避けたい方法かもしれません。しかし、看護師長との話し合いがこじれては退職の話が進みません。看護部長に相談しにくい場合は、人事部長に相談しましょう。
転職サイトや退職代行サービスで退職交渉する
どうしても退職を認めてもらえない看護師の方は、転職サイトや退職代行サービスを利用し退職交渉するのも一つの方法です。
これらのサービスを利用できるのは、一般の会社員だけと思っている看護師の方もいるでしょう。しかし、看護師の方も利用でき、代行業者が退職を進めてくれます。
退職を言い出しにくい方や面倒だと感じている方は検討しても良いかもしれません。転職サイトや退職代行サービスを利用すると、直接上司や病院とやり取りせずに済むため、さらに話がこじれることはないでしょう。
ただし、訪問看護ステーションや施設などは、業界が狭いため「退職代行サービスを利用して退職して、転職してきた」等と退職時の状況が、転職先に伝わってしまうこともあります。その場合は、転職先に良い印象を持たれない可能性があるため、慎重に利用したほうが良いでしょう。
退職が決まったらスムーズに退職手続きを進める
退職が決まったら退職の手続きを進めましょう。詳しい退職の手続きは下記のページを参考にしてください。手続きをきちんとしないと、スムーズに退職できないでしょう。
関連記事:看護師の退職ガイド!円満退職までの流れを8ステップで解説
看護師の退職を強く引き止める理由を考え、円満退職を目指そう
看護師の方が退職するときに強く引き止められる理由には、人員不足や採用の手間などが考えられます。
退職理由が現状への不満やネガティブな理由であると、強い引き止めに合いやすくなります。そのため、ほかの施設への興味やスキルアップなど、看護師長などが退職を応援しやすい理由を伝えましょう。このとき、退職の意思をしっかり伝えて、年度末の退職を選ぶなど、職場側への配慮を忘れないでください。
看護師の退職で強い引き止めにあっても、今回紹介した記事を参考に円満な退職を目指しましょう。
参考サイト・文献
「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。