「待つこと」を看護にする――発達障がいに特化した訪問看護で働くということ ~すぎのこ訪問看護ステーション 山本さんにインタビュー~

公開日:2026/03/03 更新日:2026/03/03
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発達障がいに特化した、全国的にも珍しい訪問看護ステーション「すぎのこ訪問看護ステーション」。
今回お話を伺ったのは、認知症ケアや在宅看護教育など多彩なキャリアを経て、現在すぎのこ訪問看護ステーションで働く看護師の山本さんです。

“待つ“ということ。
効率や問題解決が求められがちな看護の世界で、あえて立ち止まる看護とはどのようなものなのか。山本さんご自身の言葉から、その実践と葛藤、そしてやりがいを伺いました。

【駅チカ・オンコールなし】ワークライフバランス良し!発達障がい特化の訪問看護ステーション

事業所名

すぎのこ訪問看護ステーション

雇用形態

常勤

給与

月給 210,000円 ~ 300,000円

就業場所

〒569-0071 大阪府高槻市城北町1丁目7番16号リーベン城北401
駐車場用意 駅チカ
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これまでの看護師としての歩みと、訪問看護への転機

―まず、これまでのご経歴について教えてください。

「大学病院で急性期を4年経験した後、誘われて特別養護老人ホームへ移り、通算で20年ほど高齢者ケアに携わってきました。特に看取りの場面で悩むことが多く、40代前半で大学院に進学し、老人看護専門看護師を取得しました(現在は更新していません)」

その後は臨床と教育の場を行き来しながら、在宅看護の教員を2年間務めた時期もあると話す山本さん。訪問看護師として働き始めたのは、ここ2年ほどだそうです。現在は、訪問看護師として週3日勤務し、他に本の執筆や看護学生の実習指導員をされています。

―山本さんご自身は、どのようなきっかけで発達障がい分野に関わるようになったのでしょうか。

「これまでは、認知症ケアなど“表現することが難しい人”の看護をずっとしてきました。その中で障がい福祉のスタッフと出会い、障がい福祉の分野でも高齢化が進んでいることを知り、純粋に「どんな世界なんだろう」と興味を持ちました。正直、看護の教科書を見ても、発達障がいの看護はほんの数ページ程度で、私自身ほとんど学んできていない分野でした」

山本さんは、とあるインタビューを通して、すぎのこ訪問看護ステーションの小林さん(社会福祉法人北摂杉の子会 地域医療支援部統括部長・理事)と出会いました。最初は「話だけ聞いてみよう」と思ったと話します。

「小林さんから“働いてみたら?”と声をかけてもらって。その時は覗き見のつもりだったんですけどね」

こうして、山本さんは探求心と共にすぎのこ訪問看護ステーションで働くことになります。

認知症ケアの“当たり前”が通用しなかった

―実際にこの分野に入ってみて、印象が変わった点はありますか。

「認知症ケアで大切にしてきた、目線を合わせることや気持ちを通じ合わせる、といった関わりが、自閉症の方にはまったく通用しない。その事実に衝撃を受けました。」

今まで関わってきた患者さんや利用者さんとは全く異なるアプローチは、驚きの連続だったと話します。

「“どうしたらいいかわからない”という戸惑いからのスタートでしたね。別の世界に足を踏み入れた感覚でした」

「待つ」ことを大切にする看護──信頼関係が育つまで

―発達障がいに特化する訪問看護には、どんな困難さとやりがいがありますか。

「正直、こんなにも発達障がいの方が多く、困っている人がたくさんいるとは知りませんでした。家から出られない方も本当に多いんです」

その“生きづらさ”にどう寄り添い、どう励ますのか。信頼関係は簡単には築けません。訪問を繰り返して、ようやく体に触れることを許してもらえたお子さんもいるそうです。

「利用者さんはすごく繊細で、でも一人ひとり違っていて、面白い。大変だけど、そこにやりがいがありますね」

―今まで経験されてきたものと異なるアプローチはどのように対処されていますか。

「小林さんから言われた“ネガティブ・ケイパビリティ”という言葉を実践できるよう頑張っています。不確実な状況に耐え、すぐに答えを出さずに“待つ力”、という意味合いなのですが、頭ではわかっていたけれど、実践してみると本当に難しい。でも、すぎのこ訪問看護ステーションは、その“待つ時間”を大切にし、許してくれる場所なんです」

利用者さんだけではなく、スタッフに対しても同じように“共に寄り添う”姿勢を大切にしています。

「自分自身も“グラデーションの中にいる”と感じるようになりました。白か黒かではなく、揺れながら関わることを認めてもらえる環境ですね」

「正直、訪問看護を始めて半年ほどで“辞めたい”と思ったこともあります。信頼関係が築けない、自分は向いていないんじゃないかと。でも、その時に同僚や小林さんが話を聞いてくれました。今は、これから同じようにもがくスタッフを支える側にもなりたいと思っています」

看護師特有の“感情労働”も、少しずつ手放せるようになってきたと話す山本さん。新たなチャレンジは着実に歩みを進めています。

TEACCHプログラムと、その人に合わせた標準的支援

TEACCH(Treatment and Education of Autistic and related Communication-handicapped Children)とは、自閉症及び、それに準ずるコミュニケーション課題を抱える子ども向けのケアと教育プログラムのことです。

すぎのこ訪問看護ステーションでは、TEACCHを基にした標準的支援(以下標準的支援)を実践しています。

※標準的な支援とは「個々の障害特性をアセスメントし、課題となっていることや障害を引き起こしている環境要因を調整する支援」

―標準的支援は、どのように活かされていますか。

「“構造化”が大きなポイントです。スケジュールの見通しを立て、予告し、次に何をするのかを視覚的に伝える。利用者さんは、先が見えないと不安になる方が多いですが、見通しがあることで自己管理できるようになっていきます」

―実際に印象に残っているエピソードがあれば教えてください。

「実際に、中学生の頃から支援を続け、高い偏差値の大学に合格された方もいました。SST(ソーシャルスキルトレーニング:社会で生活していくために必要な『ソーシャルスキル』の考え方や行動・方法を学び、身に付けるための支援『トレーニング』)を重ね、自信を持って“卒業”されていった姿は印象的でしたね」

“正解がない”中で、個別性に合わせた看護を提供していくことは、試行錯誤の連続です。その中で山本さんが大切にしていることは“ぐいぐい行かないこと”と話します。

「そっと差し出すように関わることです。他にも、音楽でしか看護師とつながれない利用者さんがいらして、1年以上同じ始まりと終わりの曲を決めて流すということを繰り返しています。本当に少しずつ、少しずつ変化していくのを隣で感じています」

「利用者さんに“受け入れてもらえた”と、感じた瞬間に勢いよく行くと、関係が壊れてしまう。だから、慎重に、接近するように心がけて訪問しています」

―日々の訪問の中で、心が動く瞬間はどんなときですか

「片づけられないお母さんがいらして。家の中ぐちゃぐちゃなんですが、だからと言って、“片づけて”とは簡単には言えないんです。でも、訪問をしていると、毎回きれいなところが一部だけあるのに気がついて。そういう時は嬉しいですね。一般的な訪問看護とは少し異なり、利用者さんを発達障がいのある方に限定して支援しているため、“これも看護なのかな?”と迷うこともあります。本当は、こういった日々のかかわりを言語化できたらいいですね」

―点滴や清拭のように名前があるわけではないからこそ、難しさがありますね。

「看護で大切な“アセスメント”は、どこに行っても一緒だと思います。すぎのこ訪問看護ステーションでも大事にしています。そういう意味では、アセスメントこそが看護の本質で、そこは共通していると感じていますね」

―これから、すぎのこ訪問看護ステーションでチャレンジしていきたいことはありますか。

「そうですね。今後は、視野を広げて、法的な関わりもしていきたいと考えています。他ではなかなかチャレンジできないことを、どんどんやっていきたいと思っています」

利用者さんが採血を受けやすくするためのツールで、予行練習する山本さん

すぎのこ訪問看護ステーションならではの強みと働き方

―すぎのこ訪問看護ステーションだからこその強みはありますか。

「やはり、発達障がいに特化した訪問看護という、誰もやっていない分野に挑戦していること。それが最大の強みだと思います」

―実際にはどんな働き方をされていますか。

「夕方に訪問が集中するため、私は10時45分〜19時のシフトで、午前1件、午後2〜4件ほど訪問しています。療育的なかかわりが多く、プログラム作りや準備の時間も大切な仕事です。例えば、病院で採血をする利用者さんへ、採血を受ける流れがわかるようにイラストと簡単な言葉で表を作っています。結構手作りが多くて、利用者さんそれぞれにカスタマイズできることが目標です」

営業をしなくても、利用者さんの相談や依頼が途切れないと言います。24時間対応やオンコールがなく、家庭と両立しやすいのもポイントです。訪問ノルマもなく、就業スタイルも比較的柔軟に対応できることが働きやすさにもつながっています。

「働くスタッフの生活を大切にしていることが、結果的に良い看護につながっていると感じます。オンコールがない働き方は、身体的にも精神的にもとても楽です。利用者さんやご家族からは、メールで相談を受けることもありますね」

利用者さんは、比較的若い方が多いためスマートフォンを活用しているケースも多いそうです。

最後に、山本さんに訪問看護への転職や興味のある読者の方へメッセージをいただきました。

「とりあえず、体験してみてほしい。まずは見てみることをおすすめしますね。“待つこと”が苦じゃない人には、きっとはまる分野です。利用者さんがお子さんの場合は成長を見守れるので、大きなやりがいもありますよ」

事業所には、大きな窓から自然光がたっぷり入ります

インタビュアーより

山本さんの言葉から伝わってきたのは、発達障がいに特化した訪問看護が、特別な技術や派手な支援ではなく、「急がず、壊さず、待ち続ける」姿勢の積み重ねで成り立っているということでした。効率や問題解決が重視されがちな看護の現場で、立ち止まり、そっと隣で寄り添う。そんな看護を垣間見た気がしました。

すぎのこ訪問看護ステーションは、子どもから大人まで、幅広い発達段階の利用者さんをケアすることができる、看護師としても非常に学びの深い職場です。この記事が、訪問看護や発達障がい分野に関心を持つ方にとって、自身の看護や働き方を見つめ直すきっかけとなれば幸いです。

事業所概要

事業所:すぎのこ訪問看護ステーション

住所:大阪府高槻市城北町1丁目7番16号 リーベン城北401

事業所紹介ページ:https://ns-pace-career.com/facilities/10023

【駅チカ・オンコールなし】ワークライフバランス良し!発達障がい特化の訪問看護ステーション

事業所名

すぎのこ訪問看護ステーション

雇用形態

常勤

給与

月給 210,000円 ~ 300,000円

就業場所

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記事投稿者プロフィール画像 NsPace Careerナビ 編集部

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