「楽しい」を原動力に~薬剤師×訪問看護師が拓く多職種連携の未来~コスモ訪問看護リハビリステーション蓮田 橋本さんにインタビュー

地域に根差した医療・介護サービスを提供するコスモ訪問看護リハビリステーション蓮田様。多職種連携を重視し、利用者様一人ひとりに合わせた質の高いケアの提供に尽力されています。訪問看護事業の立ち上げから携わり、薬剤師と訪問看護師という稀有なキャリアを持つ橋本様。そのキャリアの経緯や訪問看護への想い、そして未来への展望について、お話をうかがいました。
薬剤師から訪問看護師へ。多職種連携への挑戦
当ステーションは薬局が母体で、介護保険制度が始まる2000年より前から、訪問薬剤サービスに取り組んできました。個人宅だけでなく、特別養護老人ホームや有料老人ホームなどの施設においても、薬剤師が薬剤管理を担っていたのです。私自身も2000年に薬剤師として入社し、施設の薬剤管理を通じて看護師と関わる機会が多くありました。
2013年に弊社が訪問看護事業を立ち上げたのを機に、薬剤師としてこの事業に関わり始めました。社内で多職種連携を進めるなかで、薬剤師の立場から看護師との連携の難しさを感じる場面があって……たとえば、薬の管理や選択について意見が食い違うことがあり、苦労することがありましたね。なかには「看護師ではないのに…」と、薬剤師である自分が一線を引かれているように感じることもありました。
私の母が看護師だったこともあり「自分に看護師の資格があれば、もっとスムーズに連携できるのではないか」と思うようになりました。その思いを社長に相談したところ、医療職ではないものの地域との連携に熱心な社長は「社内でしっかり連携が取れれば、地域でもより良い連携が取れるはず」と背中を押してくれたのです。看護師の資格をとることを決意し、そこから3年間、看護学校に通いました。
社会人になってからの学生生活は、本当に楽しく、充実したものでした。看護を学ぶなかで、薬剤師が普段やっていないことや、看護師が薬についてどの程度学んでいるのかといった『職能の理解』が深まり、とても新鮮でしたね。薬剤師としてのこれまでの学びを振り返る機会にもなり、有意義な時間だったと思います。
訪問看護で必要となる採血などの技術を習得するため、提携先の整形外科病院で、数ヶ月間研修を受け、病棟業務だけでなく、夜勤やオペ室も経験しました。訪問看護未経験だった私が、看護学校を卒業してすぐに現場に出ることで、今後の新卒採用や研修の制度を作る際のモデルケースにもなれたのではないかと思っています。

利用者と築く、深い関係性がやりがいにつながる
訪問看護のやりがいは、利用者さまと深く関われることです。病院と異なり、私たちは利用者さまのご自宅という生活空間に入らせてもらいます。病気や生活の相談にのったり、ケアを提供したりして信頼関係を築くことで、利用者さまは私たちを心待ちにしてくれているのです。
私は訪問看護師と利用者さまの関係を『他人でありながら、家族に近い他人』のような存在だと感じています。入浴介助といったパーソナルな部分に触れることや、ご家族関係にも深く関わるなかで、本当に近い存在だと感じてくれていると実感しますね。サービス提供者でありながら、こうした親密な関係性が築けることに、大きなやりがいと楽しさを感じています。
看取りのケアは「これで良かったのかな」と自問自答することもありますが、やりがいはありますし、その経験を次に活かすことが大切だと考えています。もちろん大変なこともありますが、それを上回る楽しさや喜びがありますね。人と人との関わりなので相性もありますが、コミュニケーションを大切にし、良い関係性を築けるよう心がけています。
支え合いが根付いた職場。看護とリハビリそれぞれの視点を活かして
当ステーションには看護師10名と、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のセラピストが7名在籍しています。看護師は30代後半から40代前半が中心で、ほとんどが子育て世代です。そのため、お互いに休みをカバーし合う文化が根付いていますね。
在籍するスタッフは、小児や循環器、難病など、さまざまな専門性を持ち、それぞれの強みを活かしたケアを提供しています。未経験分野の利用者さまを担当する際は、経験豊富なスタッフが同行し、OJTで実践的に学べる環境を整えています。幅広いニーズをカバーできるように日頃から助け合い、毎週のカンファレンスで、学びを深めています。
週に複数回訪問する利用者さんには、ひとりの担当看護師だけでなく、複数のスタッフで訪問する体制をとっています。緊急時の備えや、看護アセスメントやケアが固定化しないよう多角的に支援するためです。ただ、精神科訪問看護のように、利用者さまとの関係性が重要な場合は、担当を固定するなど柔軟に対応しています。
リハビリスタッフとの連携も密で、看護師がリハビリに同行して移乗や介助方法を学んだり、逆に看護師の入浴介助にリハビリスタッフが同行し、介助方法や嚥下の様子を評価したりすることもあります。
充実した教育体制と福利厚生。多職種と互いの役割を理解し合う取り組み
当ステーションは教育にも注力しています。入社後は3ヶ月を目安にプリセプターが、日々の記録や業務について丁寧に指導します。集合研修では、訪問看護の制度や多職種の役割を学び、各事業所でのOJTでは、同行訪問を通して実践的な学びを深めます。外部の学会や勉強会への参加も積極的に推奨しており、勤務扱いの研修では、参加費や交通費、宿泊費を会社が全額負担してくれます。年間計画に基づき、毎月の社内勉強会を実施し、スタッフは最低年に1回は外部の研修に参加しています。また、多職種連携を深めるため、訪問看護師が法人内の通所サービスで研修をおこない、食事介助や機械浴など、普段経験しにくいケアを学ぶ機会もあります。ときには通所サービスのスタッフから「利用者さまの食事介助を言語聴覚士に相談したい」といった声があり、そのときは私が調整役となり、職種を超えた連携をしています。
さらに、メーカーを招いた人工呼吸器やPCAポンプなどの実践勉強会も頻繁にあります。薬局が母体なので、社内でPCAポンプを借りて演習できるのは大きなメリットです。また薬学生や薬剤師が訪問看護に同行し、現場での薬の使われ方を学ぶ機会も作っています。逆に、看護師が調剤薬局で研修し、薬剤業務への理解を深める取り組みもおこなっていますね。
当法人では、国家資格者がキャリアを維持しながら働き続けられるよう、7.5時間勤務を採用しています。パート勤務で入社したスタッフが「これなら正社員で働けるかも」と、途中で正社員に切り替えるケースも少なくありません。
福利厚生では、有給消化率は100%ですし、残業は一般スタッフで月5時間未満と少なめです。医療職の正社員にタブレットと携帯電話の支給、20台以上の社用車の完備で、移動中の車内で記録がおこなえるよう、業務の効率化を図っています。ほとんどのスタッフが定時で仕事を終えていますね。
子どもの看護休暇や男性の育児休業の取得も多く、1年間の育休を取得した男性スタッフもいます。妊娠中のスタッフがいれば、周囲が率先して負担の大きいケアを代わるなど、誰もがライフステージに合わせて働き続けられる環境が整っています。こうした柔軟な制度と、互いに助け合う社風こそ、当ステーションの大きな魅力です。

地域に貢献する「開かれた」ステーションでありたい
当ステーションは、地域とのつながりも大切にしています。月に1回、近隣の方を対象にサロンと呼んでいる『認知症予防の会』を開催し、脳トレや『蓮田っていいな体操』、間違い探しや計算などで頭を使いながら、会話を楽しんでもらっています。
今後は薬局とも連携し、防災情報の発信にも力を入れる予定です。将来的には、薬局の窓口に訪問看護師を配置し、地域の方がいつでも気軽に医療や介護の相談ができる場所を作りたいと考えています。
私たちが活動する蓮田市は、2050年には高齢化率が38%に達すると予測されており、高齢の夫婦や独居の方が多い地域です。一方、以前、小児医療センターが近くにあった名残りで、小児の医療的ケアのニーズも少なくありません。そのため、当ステーションでは0歳から高齢者、精神科まで幅広く対応しています。
これからは、薬局を訪れる『ケアが必要になる手前の方々』にも訪問看護を広げていきたいと考えています。法人内には居宅介護支援事業所も併設しているので、ケアマネジャーとの連携も強みです。医療だけでなく、介護にも強い会社を目指し、私自身も看護師・薬剤師の資格を活かして、地域に必要とされる場所を目指して取り組んでいきたいです。
インタビュアーより
薬剤師と看護師の視点から、利用者さまだけでなく地域の方々を支えるために尽力されている橋本様。「訪問看護は楽しい」と明るく語られる姿が印象的でした。多職種連携だけでなく、地域活動や働きやすい職場づくりにも注力されているコスモ訪問看護リハビリステーション蓮田様。訪問看護師として学びながら成長できる環境が整っています。興味をお持ちの方は、ぜひお問合せください!
事業所概要
コスモ訪問看護リハビリステーション蓮田(埼玉県蓮田市)
住所:埼玉県蓮田市東5-8-28
運営方針・理念:
「自分たちで介護がしっかりできるだろうか」
「家族と一緒に暮らしたいけど負担をかけたくない」
そんな不安を抱えている利用者の方の希望を実現するために、ご家族や利用者の方に寄り添い、私たちが看護・リハビリのお手伝いをします。

「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。