「看護師ファースト」の信念で、温かい訪問看護を実践~にじいろナースステーション 富樫さんにインタビュー~

公開日:2025/06/23 更新日:2025/06/23
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「看護師が幸せでなければ、質の高い看護はできない」そう語るのは、にじいろナースステーションの管理者・富樫さんです。コロナ禍という逆風のなか「看護師ファースト」の想いで立ち上げたにじいろナースステーションには、仲間を支え合う温かなチームが育まれています。今回は、富樫さんの訪問看護との出会い、ステーションを立ち上げたきっかけ、そして今後のビジョンについてうかがいました。

訪問看護との出会いはご縁。強い想いでステーション立ち上げを決意

元々は病院に勤務していましたが、結婚、出産、子育てを経て一度病棟を離れました。子育てにしっかり向き合いたいと思う一方で、当時は女性のキャリア継続が難しいと言われていて、私自身もそれを強く感じていました。そんなとき、幼稚園のママ友に「訪問看護という働き方があるよ」と勧められたのが、この世界に足を踏み入れたきっかけでした。子どもたちが帰ってくる時間までに自宅に戻れる、自分で働き方を調整できる職場があると聞いて、当時は非常勤勤務からスタートしたんです。

私が看護学生の時代には在宅看護の授業も実習もありませんでした。ただ、在宅で父親を看取った経験があり、そのときに訪問看護という存在を知り、興味を持っていたんです。その経験もあり、さまざまなご縁がつながって訪問看護にめぐりあい、今に至ります。

訪問看護の道へ進む前に、訪問診療での勤務経験はありました。どちらも全くちがう仕事内容だと理解しつつも、なんとなくイメージはできていたので取り組みやすかったですね。

私がステーションの立ち上げを決意したのは、ちょうどコロナ禍の真っ只中でした。以前勤めていた職場で管理者をしていたのですが、マスクが手に入らず、法人からの理解も乏しい状況に直面したんです。マスクが足りないことに法人が動いてくれず、個人で調達したり、自腹を切ってスタッフに配ったり、手作りのフェイスシールドでしのいだり…。夏の猛暑のなか、洗って使うマスクで訪問しながら「このままではいけない、看護師を守れるステーションを自分で作ろう」と決意しました。

私は「看護師の幸福感が看護の質に直結する」と強く信じています。利用者さんとご家族の命を守るのが私たちのミッションですが、その大前提として、まず看護師が幸せに働ける環境を作りたいという思いがありました。コロナ禍の大変な逆風のなかでの決断でしたが、2020年5月頃には立ち上げを決意し、2021年1月に念願の当ステーションを立ち上げたんです。

当ステーションのサービス提供エリアの利用者さんには、医療ニーズの高い方、末期がんや難病、看取りの依頼も多いのが特徴です。介護保険よりも医療保険のニーズが非常に高い状況で、地域住民の高度な医療ニーズに応える、やりがいのある看護を実践しています。ほかのステーションで「困難ケース」とされた依頼がくることも多いのですが、介入してみると意外に問題なく関われることも多く、そこにやりがいを感じています。地域福祉は充実していますが、独居の高齢者も多く、コミュニティが断裂している方々も多いため、緊急対応が求められることもありますね。

管理者としての仕事観をお話しされる富樫さん

現場に寄り添う管理者として

私は管理者ではありますが、訪問看護認定看護師の資格をもっていることもあり、プレイヤーとしても日々訪問に出て、現場で看護を実践しています。経営者や管理者は経営や管理に専念すべきだという意見もありますが、私にはしっくりこないんです。もちろん管理業務との兼ね合いで訪問件数の調整は必要ですが、現場に出て、利用者さんの生の声を直接聞くことや「いつもよくやってくれるんですよ」と看護師たちが褒められている姿を見るのが、私にとってなによりのエネルギーになります。管理業務だけをやりたくて経営者になったわけではないので、これからも現場とスタッフに寄り添い続けるつもりです。

チームで支え合う環境を重視。いい看護を提供するためなら準備は惜しまない

当ステーションの特徴は「看護師を大切にする温かい職場」であることや「チームで支える」ことを重視していることです。看護師は現在9名、セラピストは2名が在籍しており、20代から40代まで幅広い世代のスタッフが活躍しています。子育て中のスタッフも多く、急な発熱や体調不良などにも臨機応変に対応できるよう「お互いさま」の精神で協力し合う風土づくりをとても大切にしています。

正直に言うと、以前は人間関係で苦労したこともありましたが、現在は人間関係も良好で、和やかな雰囲気が自慢です。「まずはやってみよう」ということを大切にしていて「責任は私がとるから、あなたが思うようにやっていいよ」という思いでスタッフを送り出しています。たとえ失敗しても、その人を責めるのではなく、その行動の背景にある思いにフォーカスし、チームで解決策を考えるという意識がみんな身についていますね。笑顔とユーモアを大切にしながら、困難を乗り越えていくチームができていると感じています。

また、待遇面も充実していると思いますよ。訪問に必要な物品はすべて貸与しているのはもちろん、移動に使用する自転車も各スタッフに1台ずつ用意しています。また、看護師自身を癒すことも必要だと考え、スタッフ一人ひとりにアロマオイルを持たせているんですよ。「職人としての看護」を支援できるよう、質の高い看護ができる準備を惜しまないのが、私のポリシーです。いい看護を提供するためには、道具も大事ですからね。

未経験でも安心して働けるように。教育体制の充実にも注力

当ステーションでは、訪問看護未経験の方も大歓迎です。チームで支える体制を整えているので、安心感をもって働けます。

教育体制としては、LINEや電話を活用した「電話OJT」を実施しています。私自身「垣根のない管理者」を目指しているので「困ったことがあればいつでも電話していいよ」というスタンスです。電話OJTを通して、経験の浅いスタッフが、だんだんと私に電話をかける頻度が減り、自分でできるようになっていくことを実感しています。

新人さんには、最初は介護保険の利用者さんから慣れてもらい、段階的に医療保険の方への対応に移行できるよう、小さなステップを積み重ねながら成長できる環境を整えています。医療処置のスキルは病院勤務のときに習得しているスタッフが多いですが、訪問看護では家族との関わり方や地域資源の提供、相談対応などで困ることがあるため、そこは一緒に考え、確実な情報提供ができるようサポートします。

また、内部研修の時間をとるのが難しいという現状から、外部研修ツールも活用し、スタッフ一人ひとりのスキルや経験値に合わせた個別性の高い育成にも力を入れています。興味があるものを選んでもらったり、こちらから受講を促したりすることもあります。また、認定看護師の資格取得を目指す方にも、お休みの確保や働き方の調整などでサポートできるよう検討中です。

にじいろナースステーションの仕事風景。「まずはやってみよう」を大切にしていることも特徴です。

地域のニーズに応えられるステーションを目指して

今後は、地域のニーズに応じた事業展開に注力したいと考えています。とくに力を入れたいのは、新卒看護師の育成です。私たちの事業所には20代の若手も多く、現在は23歳の看護師がロールモデルとして活躍してくれています。平均年齢が上がっているケアマネジャーの高齢化や、ほかのステーションの事業継承の課題なども感じている中で、若い世代が未来をつくっていくことが重要だと考えています。多様性を受け入れ、柔軟な思考で人材育成に取り組んでいきたいと考えています。そのために、多様性の時代にふさわしく、一人ひとりが自分らしく働ける柔軟な働き方の実現に力を注いでいます。

また、この地域ではホスピスの不足や、看取りの場所が見つからないという課題に直面しています。ご本人の意思でホスピスに入れない、順番待ちで命の選択を軽くしてしまうような風潮があることに、私は心を痛めています。そのため、将来的には看取りができる施設の設立も考えているんです。社会情勢や行政の協力も必要ですが、私の思いは変わりません。

訪問看護で最も大切な視点は「生活者」をみることだと私は考えています。私たちは全員が生活者であり、生活している人が生活者をアセスメントできないはずがない。だから、誰にでもできるはずなんです。訪問看護はハードルが高いと思われがちですが、決してそんなことはありません。これからも、看護師を大切にする温かい職場で、若手もベテランも安心して働き、地域の高度な医療ニーズに応えられる、やりがいのある看護を実践できるステーションであり続けたいと思っています。

インタビュアーより

働くスタッフに寄り添い、熱心にサポートする姿勢がとても素敵な富樫さん。地域の将来も考えておられ、新人看護師の教育やホスピスの設立など、この地域で生活するすべての人の幸せを考えておられる姿に心打たれました。スタッフ同士の温かい関係、チームで支え合う風土は、訪問看護未経験の方でも安心して働ける環境です。「地域の支えになりたい」という想いをお持ちの方は、ぜひお問合せください!

事業所概要

にじいろナースステーション(東京都武蔵野市)

住所:東京都武蔵野市吉祥寺北町1-18-1 第一雅マンション202

理念:

・療養者とご家族の生き方を尊重しながら「共に考え、寄り添い、生きる力を支え強める」看護を実践します。

運営方針:

1.地域で必要とされるステーションとなる

2.専門性と人間性を高める

3.スタッフの幸福度を高め、看護の質を担保する

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記事投稿者プロフィール画像 NsPace Careerナビ 編集部

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