「言葉を大切に」~患者さんの想いを尊重した看護を提供~ラミーナ訪問看護ステーション 木村さんにインタビュー

病棟勤務を経てがんセンターに転職し、14年間の緩和ケアの経験を積まれた木村様。訪問看護ステーションを立ち上げられた経緯や大切にされている想い、今後のビジョンをうかがいました。
緩和ケアを経て訪問看護の世界へ
看護学校を卒業して大学病院に入職し、脳外科や泌尿器科、ICU、呼吸器内科、循環器内科、放射線科の病棟で働きました。看護師として10年目を迎えたとき、今後は緩和ケアに携わりたいと思ったのです。
その頃から訪問看護にも興味を持っていましたが、まずは緩和ケアを学んでからと考えました。そんなときに千葉県にあるがんセンターに緩和ケア病棟ができると聞き、転職を決めました。
がんセンターでは、整形外科、泌尿器科、緩和ケア病棟を経て、退院調整をする部門の「在宅支援センター」が立ち上がり、私は初期から関わらせてもらいました。病院全体の在宅調整を担う中で、在宅で過ごす患者さんのことや、支援してくださる訪問診療や訪問看護、居宅介護支援事業所と連携させて頂きました。この時期に今のラミーナに繋がる多くの学びがありました。
地域医療連携室では、患者さんとの関わりが少なく、この先の看護師としてのキャリア形成に悩み、元々やりたかった在宅医療に進むことに決めました。
千葉県がんセンターを退職後、さくさべ坂通り診療所で在宅緩和ケアを学びながら緩和ケア認定看護師の資格を取得しました。
その後、千葉県がんセンター時代からお世話になっている五味クリニックの関連会社から2017年に訪問看護ステーションが開設され、管理者となりました。管理は初めての経験が多く、戸惑いや不安もありましたが、会社のサポートもあり業績は順調で、2021年に独立し今年6月で4周年を迎えることができました。
五味博子先生は、今も変わらず連携してくださっていて、安心して訪問することができています。

大事にしているのは「患者さんが語る言葉や想い」
当ステーションの特徴は「患者さんの言葉を大事にする」ことです。看護師それぞれに想いは持っていますが、まずは「患者さんが何を考えているのか」「どんな体験をしながら過ごしているのか」など、患者さんの言葉で語ってもらい、そこを理解するところから始めています。
患者さんの考えていることが不利益にならなければ基本的に見守る姿勢ですし、もし不利益になるようなら、指導というのではなく「こういう方法もあるのではないか」と提案する形で進めていくことを意識しています。
やはり患者さんに語っていただくには、コミュニケーションスキルが欠かせません。患者さんの言葉を勝手に置き換えていないか、意識しながら聴くようにしています。
「患者さんの言葉を大切にする」という軸は、がんセンターでの経験に原点があります。当時は緩和ケアの知識を持っていたこともあり「こういう風にした方がいい」「この薬を使った方がいい」というように患者さんのためにと言いつつ、割と自分の世界を押し付けていた気がします。
その当時の患者さんに「自分たちでどうするかを選ぶのではなく、レールに乗せられているようだ」と言われたことがありました。患者さんがどうしたいのかを、自分では考えているつもりでしたが「こうした方がいいのではないか」と誘導しているような感覚があって、だんだん苦しくなりました。
在宅の世界に入って、相手との向き合い方を180度変える必要が出たときに、これまでいかに自分本位で看護をしていたかというのを実感しました。その経験から、ステーションの理念は「患者さんの思いや言葉を大切にする」ということを軸にやっていこうと決めました。
地域とつながり、気軽に相談できる場を作りたい
ステーションを立ち上げた当初は、規模を大きくして、スタッフも充実させて……というように、事業所として安定することばかりを考えていました。でも、大きくなった先に何を見据えるのかという部分が私のなかにあまり見えてこなかったのです。1人ひとりの患者さんを大事にしていくのであれば、今くらいの規模でみんなが密に連携を取れている方が、働きやすいのかなと今は思っています。
個人的に考えているのは、患者さんやご家族が、病院ではない場所で、がんやがん以外の病気について、安心してフラットに話せるような場所を作りたいと考えています。
様々な不安や今後のことを、ゆっくり考えたり話したりすることで、少しずつ自分を取り戻せる場所が必要だと感じています。
そういった場所作りを進めていくには、地域の方々との交流が大切だと思っているのですが、現時点ではあまりできていません。公民館で病気予防に関する勉強会や健康教育はさせてもらっていますが、たとえば町内会や自治会とはつながっていないと気づきました。
訪問看護という点では、お看取りをさせていただいた患者さんのご家族から「あのとき母もお願いしたから、父もお願いします」というようなうれしいつながりはありますが、対地域への存在感はまだまだ地道な活動が必要かなと思っています。当ステーションのある地区は他市に比べて訪問看護ステーションの数が少ないので、地域でアイデアを出し合って、横のつながりも大事にできたらいいですね。

スタッフ連携で、より良い職場づくりと丁寧な看護の提供を
当ステーションは丁寧なケアと丁寧な対応をするスタッフが多いです。頼もしいスタッフがそろってくれていて、ありがたいですし、患者さんから感謝されたり、つながりをより感じられたりするところだと思います。患者さんとしっかり向き合って看護を提供したいという方がいたら、ぜひ一緒にやっていきたいです。
私自身もまだまだ未熟なところがあるので、みんなに教えてもらいつつ、新しいものを取り入れながら、時代に沿って活動していくことを大事にしながらやっていきたいと思っています。
私自身、一看護師かつ経営者としては初めてなので、今でも人事評価制度やラダーについて、どういう取り組みをするか悩むこともあります。
教育はもちろんですが、お給料の面でもみんなの頑張りを反映させたいですし、まだまだ試行錯誤していますよ。スタッフには大変な思いをさせているかもしれないけれど、良い形で還元できるようにしたいです。
最初は緩和ケア専門のステーションにしたいという思いがありましたが、周りを見渡すと、がんだけでなく本当にさまざまな病気の方がいて、みんな一生懸命生きていらっしゃることを知りました。今はがん以外の疾患も積極的に訪問させていただいています。
患者さんの言葉を大事にして「今どう生きていきたい」とか「こんな風にしていきたい」というような言葉を拾うことをこれからも大切にしていきます。
そして私たちから患者さんにあらためて聞かなくても「あの人はそう言っていたよね」というように、患者さんの言葉を引き出しにたくさんしまっていけるような、そういう日々の訪問と関わりをしていきたいと思っています。
インタビュアーより
がんセンターで長く緩和ケアに携わられた木村様。「患者さんの言葉を大切にする」という優しく温もりある姿勢がとても印象的でした。木村様を中心にスタッフの皆様もとても和やかな雰囲気で、密な連携を大切にされています。患者さんの思いを尊重した看護を提供したい方にぴったりのステーション様です!
事業所概要
ラミーナ訪問看護ステーション(市原市)
住所:市原市辰巳台東1-11-7 辰巳台イーストメゾン105号
運営方針・理念:
「家で過ごす」をかなえる
患者さん・ご家族の思いを聴き自分らしく生ききることを支援します

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