訪問看護を拒否していた奥様 最期を看取るまでに伝え続けた熱意
末期の肺がんを患うご主人を一人で介護する奥様。当初は在宅に拒否反応を示していたもの、訪問看護師の説得により最期は家で看取ることに。ご主人の最期を家で看取った奥様が訪問看護師に伝えてくれた感謝とは。
インタビューご協力者
荒井 恵美子
管理者 / 看護師
アムス訪問看護ステーション
末期の肺がんを患っていた70代前半のご主人と60代後半のその奥様
荒井さんが出会ったのは、末期の肺がんを患っていた70代前半のご主人と60代後半のその奥様。ご主人は会社経営をされていて裕福なご家庭でした。そのご夫婦と息子さん夫婦、お孫さんと三世帯で住まわれていたのですが、ご主人の介護はすべて奥様がされていたそう。
荒井さんは緩和病棟からご自宅に戻られる際、ソーシャルワーカーさんの勧めで入ることになったのですが、当初奥様は「なんで家で看れるの?」「看護師さんが家に来て何をするの?」「私は絶対に家で看取れない」と、訪問看護には否定的な考えをもっていました。そのため往診の先生も入れず、通院していた状態。
しかし徐々に病状が進んで通院も困難になり、看護師のサポートが大きくなっていきました。その間、荒井さんは奥様をなんとか説得。ご主人の症状や時機を伺いながら、「そろそろ在宅ではどうでしょうか?」「私たちがサポートしますから」と訪問看護師が入ることを勧め続けていたそうです。
そしてご主人自身の希望もあって、「お父さんが家にいたいならそうしましょう。荒井さんが来てくれるなら、家で看ます」と奥様はついに納得をしてくれました。
荒井さんは、奥様が「家で看れる」と思ってくれたことがとても嬉しかったと言います。
そしてご主人がいよいよとなった時、夜中に緊急コールで呼ばれた荒井さん。その時はまだご主人も呼吸があったので、奥様に現在の呼吸の状態を説明。「今後こうなったらまた呼んでくださいね」と案内をして一回帰ったのですが、その後再度のコールを受けた時に、ご主人はお亡くなりになりました。
ご主人がお亡くなりになった悲しみがある中で、奥様は荒井さんにこう言ってくれました。
「主人の容態が荒井さんの言った通りでした。本当に最期は静かに息を引き取ることができました。最後までありがとうございました」
訪問看護という慣れない環境に消極的だったものの、荒井さんをはじめとした訪問看護師の熱心なサポートによって徐々に心を開いていき、最後は訪問看護でよかったと思ってくれるまでになった奥様。荒井さんはご主人のサポートを通じて、この奥様から最後に感謝の言葉をいただけたことが本当に嬉しかったそうです。
世代によっては、看護やお看取りの場所は絶対に病院だと思っている利用者さんやそのご家族は多くいらっしゃいます。その中で、在宅という選択肢を提供し、ご本人やご家族に安心感を与えられるのは訪問看護師の大きな役割。荒井さんはこの奥様との出会いを通じて、看護師としてだけでなく、自分自身の成長にも繋がったと振り返ります。
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