先生、ご家族から感謝された“救急車を呼ぶ”というとっさの判断
誤嚥をしても病院に行こうとしなかった80代のパーキンソン病の男性利用者さん とっさの判断と行動力が、ご家族との信頼関係やキャリアを考えるポイントになった
インタビューご協力者
吉良 桂子
取締役 / 在宅看護専門看護師
訪問看護ステーション国立メディカルケア
80代でパーキンソン病を患っていた男性
吉良さんが今でも思い出す利用者さんがいます。それは80代でパーキンソン病を患っていた男性。奥様と息子さんと3人暮らしをされていました。
その男性からは、訪問をしていた当初、吉良さんのちょっとしたアプローチによってクレームを受けてしまっていました。しかし、その後は訪問を重ねていくうちに信頼されるようになったのだとか。
ある日、男性が誤嚥をしてしまいました。訪問の前日、吉良さんは「すぐ病院に行ってください」と伝えていましたが、男性は「熱が下がったし、もう大丈夫だと思う」と行かなかったそうです。
しかし、肺炎を起こしても明確に症状がわかりにくいのがパーキンソン病。案の定、翌日に訪問すると、肺の音も良くなく、サチュレーションも下がってしまっていました。その時、吉良さんは直感で「あまり良くないのではないか」と感じ、自ら救急車を呼びました。
入院できるかわからない状態でしたが、利用者さんを受診させるというなかなか難しい判断をした吉良さん。しかしレントゲンを撮ってみると片肺が真っ白でした。救急車を呼ばなかったら…。
先生からは「よくこれで救急車で来たね。よっぽど優秀な看護師さんに観てもらってるんだね」と言われたそう。奥様は「本当にありがとう」と、吉良さんのとっさの判断と行動力に大変感謝していました。
その男性はその後亡くなってしまったそうですが、その後、奥様も何かがあるとすぐに頼ってくれるように。息子さんが脳梗塞で倒れてしまった時には、ステーションに相談にも来てくれました。最初はクレームから始まった関係性でしたが、気付いてみたら厚い信頼関係を築けていました。
当時、吉良さんはマネージメント業務などが増えていき、そろそろ現場は別の人に委ねようかと悩んでいた時期。そんな中、このパーキンソン病のご家族との出来事によって、「ここまで自分の看護が評価されたのだから」と、自分の気持ちに一区切りがついたと言います。
経験からくる直感で行動したこと、そして自分の看護観が間違っていないんだと再確認できたのは、その後のキャリアにおいてもとても大きなターニングポイントになったそうです。
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