106歳を看る三姉妹 喧嘩の仲裁もプライマリーケアの魅力の一つ
106歳のお母さんを介護する高齢の三姉妹。喧嘩しながらも懸命にケアをする三人に対し、家族のように寄り添う看護師が感じた、プライマリーケアの魅力とは?
インタビューご協力者
片山 智栄
看護師
桜新町アーバンクリニック ナースケア・ステーション 所長
106歳のお母さんを、80歳を超えた三姉妹で看ている、とあるご家庭がありました。
片山さんが訪問に入った時には、お母さんは心不全、不整脈もあり、
すでに寝たきりの状態。
自宅での介護は三姉妹の意向でした。
当初は少し熱が出るだけで
「小さなことでもすぐに病院に行かなければいけない」
と思っていたそうですが、
その必要性や、お母さんの体を動かすリスクについて説明すると、
段々とご自宅で過ごせることを理解していき、
「入院よりも家の方が良い」
との考えに切り替わっていったのだそう。
皆が高齢で、朝起こすことでご飯を食べさせることも大変という状況だったため、
三姉妹のケアではよく喧嘩が繰り広げられていました。
喧嘩のタネは食べさせ方や起こし方の角度だけにとどまらず、
「あの時もこうだったじゃない!」
と、昔話にまでさかのぼることも。
片山さんは、その喧嘩の仲裁や三姉妹の体のケア、
作れるご飯やベッドのレイアウト、起こさせ方、
オムツ交換の仕方など、とにかく三人をまとめながら、
一つ一つの解決策を一緒に考えていくことにしました。
時にはiPadで当時の銀幕スターの動画を見せると、
お母さんだけでなく三姉妹もとても初めての体験で
ビックリしていたそう。
まるで同じ家族のように親密な関係になったと言います。
三姉妹は確かに喧嘩をよくするものの、本当に仲が悪いのではなく、
お母さんを大事に思っての衝突でした。
介護のためにほぼ住み込みで看ていた状態で、それぞれがポリシーを持ち、
片山さんも
「少し手を抜いた方が良いかも」
と思うほどちゃんとやりすぎているほど頑張っていた三人。
三人それぞれの介護の仕方によって、お母さんも介護の受け方が変わります。
三姉妹がワイワイガヤガヤとやっているのを、
お母さんが穏やかに見守っている光景でした。
経過を看ていた三年間は、そんな三姉妹の賑やかな頑張りもあって、
お母さんは安定して長生きできました。
最期は老衰という形でお亡くなりになりました。
介護をやりきった三姉妹はお看取りもすんなりと受け入れられ、
「次は自分たちだ」
と命を閉じることについて静かに受け止めていたのだそう。
片山さんは、このご家庭に出会って地域に根ざしたプライマリーケアの
面白みを感じることができたと振り返ります。
病院では決して垣間見ることのできない家族の様子をうかがい知ることや、
小さな問題でも一緒に考えていく経験は訪問看護ならでは。
病気を治すためのケアではなく、病気と共に生きていくケアの面白さが
感じられるエピソードですよね。
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