「これ以上はお母さんまで倒れちゃう」家族ケアの正解とは何か?
奥さんの強い希望でご主人が帰宅、しかし一日中ベッドサイドでのたんの吸引が必要に。 娘さんも心配する奥さんの頑張りに訪問看護師が直面した、家族ケアの“線引き”の問題は。
インタビューご協力者
藤原 祐子
看護師
セントケア・ホールディング株式会社 事業支援本部 訪問看護サービス部 課長
嬉しかったこと、感動したことよりも、「なんで、あそこでこうできなかったのかな?」という思い出ばかり鮮明に覚えているという向上心の強い藤原さん。
そんな藤原さんが強く印象に残っているのが、
とあるご夫婦の利用者さんのこと。
肺炎で入院をしていたご主人がご自宅に戻られ、
たんの吸引が必要になっていました。
そのため、奥さんは一日中ベッドサイドで
チューブを手放せない状態に。
奥さん自身がご主人を自宅で看たいという気持ちが強かったため、
一生懸命にケアしていたそう。
奥さんの負担があまりに大きかった状態を見かねた藤原さんは
主治医の先生に相談。
しかし、「あれで仕方がない」
という見立てにとどまってしまっていました。
結局最期は、娘さんが「これ以上はお母さんまで倒れちゃう」
と申し出て、救急車を呼んでご主人を病院に搬送したんだそう。
奥さんの強い希望で行っていた家族による在宅ケア。
しかし、たとえ家族の希望でも、
「どこまで頑張るか」という線引きが非常は難しい。
藤原さんがその事実に直面した出来事でした。
藤原さんは当時を振り返り、
「病院との連携の仕方や、病院へ戻すタイミングなど、
もっとやれることはあったんじゃないか?」
という後悔が強く残っているんだとか。
「今でもチューブを手放せないでベッドサイドにいる
奥さんの姿は忘れられません」
と藤原さん。
その後、藤原さんはステーションを異動になったものの、
その奥さんはずっと藤原さんに「感謝している」と言ってくれ、
趣味で作った手作りの品を頂くほど親密な関係になっていました。
訪問看護師としてはとても後悔が残ってしまったのに、
利用者さんの家族からはそんな風に感謝してもらえた。
この出来事で「利用者さん、家族のために一番良い選択とは何だろう」、
そして「訪問看護って一体何なのだろう?」
という根本的な問いを改めて考えたことで、
自分の看護観に真正面から向き合うことができたそうだ。
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