訪問看護での終末期ケア・在宅看取り
病院から訪問看護に転職する理由に、「自宅での看取りに関わりたい」「本人・家族の望む最期を支援したい」という想いを持っている方は多いのではないでしょうか?今回は訪問看護における終末期ケアに関して大切なポイントをお伝えします。
①利用者、家族の望む治療・生活を知る
診断からの経過、病状理解や受容過程によって利用者、家族の思いは様々です。1回の訪問でその気持ちを把握することは難しいため、介入を継続する中で関係性を築き、望む治療・生活を確認していくことが大切です。利用者、家族間でも意見の食い違いがある場合もよくあります。互いの想いを確認しながら折り合いをつけていけるように支援しましょう。また、看護師や個人としての価値観を押し付けることがないように、利用者、家族が自分たちで今後の方向性を決めていけるように支援することも大切です。
②揺れ動く気持ちに寄り添う
どのように最期に向けて過ごしていくのか、この気持ち・考えは常に大なり小なり揺れ動くものです。特に疼痛や呼吸苦等の身体的変化が出てきた際に「病院の方が安心」といった考えから本当は自宅で過ごしたいのに入院を希望されるケースも多いです。予防的な症状コントロール、起こりうる身体的変化の見通しとその際の対応を事前に伝えること、24時間で電話対応・緊急訪問対応することで「家でも安心して過ごせる」と思ってもらうことが大切です。その中で病院・自宅で過ごすメリット、デメリットをそれぞれ伝えて納得感を持った選択ができるように支援していきましょう。
③多職種で目標の共有、サービスを調整する
終末期、看取りを訪問看護師だけで支援することは困難です。医師と症状コントロールを相談することや、ADLによってケアマネジャーと介護サービスの調整することが求められます。その際にも利用者・家族の望む形に添えるように調整していきます。必要時にはカンファレンスを開き、互いの情報を共有することで介入の方向性を統一していきます。
エンゼルケアに関して
在宅で看取った場合、訪問看護師によってエンゼルケアをおこなうことがあります。家族と一緒に洗髪や口腔ケア、そして、清拭などを実施し、その人らしい一張羅着てもらうことで「きれいな姿で見送ってあげられた」という家族の自宅看取りに対する納得感につながります。また、エンゼルケアをしながら介入当初からの思い出話を一緒にすることで死の受容過程を適切に進めるきっかけにもなります。家族は自宅で看取ると決めて、看取ったとしても「本当にこれでよかっただろうか?」「もっとできたことはなかっただろうか?」といった葛藤を抱いていることがあります。しっかりと家族のことも労うことも忘れずにエンゼルケアをしていただけたらと思います。
以上となります。
訪問看護の中でも終末期ケアには正解がないものが多く、看護師自身も葛藤する場面が多いです。利用者、家族、多職種間で常に対話を続けて互いに納得できる形を探っていきましょう。
▼執筆者プロフィール
藤井 達也
地元名古屋の大学を卒業後、聖路加国際病院の救命救急センターで看護師として働き始める。高齢者の最期の在り方について疑問を抱く中で、より深く意思決定の場面に関わっていきたいと考え、訪問看護の道へ。現在はウィル訪問看護ステーション江戸川にて訪問看護師として働きながら、教育、採用、管理業務の一端も担っている。
「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。