【看護師コラム】在宅看護での「家族」とは? 簡単そうで難しい「家族」の定義
看護師の岩本です。
今回は、『家族』の定義に関するコラムです。
訪問看護では、患者(利用者)と併せて、家族も対象として同じくらい重要になってきます。では、“家族”とは、いったいどこまでのことを捉えて定義づけるのでしょう?
フリードマン(1993)によると、夫婦の配偶関係や親子、兄弟などの血縁関係によって結ばれた親族関係を基礎にして成立する小集団。社会構成の基本単位。と定義づけられています。我が国の法律を見てみると、“家族”という単語は多く出てきますが、定義があったり、それぞれ定義されていたりするようです。(Ex健康保険関係法では被扶養者のこと、雇用保険法では家族=配偶者、父母・子及び配偶者父母、など)
上記の通り、家族と一言でイメージすると、血縁や婚姻の関係に当てはまる人々を思い浮かべやすいと思いますが、はたして、多様性が叫ばれ、様々な人とのつながり方がある現代において、看護職がとらえる対象としての“家族”は、血縁や婚姻のみの関係性としてとらえるのでよいのでしょうか?たとえば内縁の妻や夫は?あるいは同性のパートナーは?接点のない遠縁の親戚は?とても憎みあっている嫁姑間は?極端に言えば飼っている犬や猫などのペットは?人形や2次元の対象物は?それらは家族となりえるのでしょうか?
上野千鶴子(1991)によると、 「家族」は実体よりもより多く意識の中に存在し、血縁と婚姻の組合せではなく、その機能によって定義もできない。家族の境界設定は、人によっても異なり、その基準は歴史的にも変化していくものと言っています。つまり、一つの形は存在せず、個別的に定義される、ということです。
そう考えると、訪問看護で関わる“家族”とは、それぞれの世帯ごとに個別的に大切なヒトを捉えて看護を展開していく必要があることがわかり、とっても創造的に、柔軟に、頭と心を使うことが、訪問看護の醍醐味のひとつかもしれませんね。
ーーー
▼筆者
岩本 大希(いわもと たいき)
▼筆者プロフィール
看護師|ウィル訪問看護ステーション江戸川 所長
総合大学の看護医療学部を卒業後、神奈川県相模原市にある北里大学病院の救命救急センターのICU等で看護師として従事。三次救急のドラマティックな看護を経験しながら、患者が家に帰りたくても帰れないことで救急車のたらいまわしが起こる「ベッドの玉突き事故問題」や、突然の搬送・救命治療での充分な意思決定の時間が足りない事を問題と捉え、在宅医療・ケアの受け皿としてヘルスケアベンチャーにて24時間365日対応の訪問看護事業を起こす。
「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。