未経験から始める訪問看護という選択～スターク訪問看護ステーション目黒　難波さんにインタビュー～

スターク訪問看護ステーション目黒の管理者・難波さんに、訪問看護を始めた背景や病棟との違いについて伺いました。あわせて、1対1で向き合う看護の魅力、チームの雰囲気、印象深いエピソード、働き方や教育体制など、現場で感じていることもお話しいただきました。訪問看護未経験からスタートした難波さんの経験は、これから在宅に挑戦したい看護師さんの不安をそっと軽くし、前向きな一歩につながるはずです。

【※本記事はNsPaceCareer が事業所向けに提供している「特集記事掲載サービス」によるものです。取材・撮影・編集はNsPaceCareer が担当しました。】

訪問看護との出会いと“想定外”のスタート

―まず、訪問看護を始めるまでの経歴を伺えますか。

難波さんは大学病院で、新卒看護師として整形外科・精神科・混合病棟（呼吸器・循環器）など複数の診療科を経験されてきました。当時は「次は脳神経に行こうかな」「消化器も経験してみたい」と、病院の中でまだ経験していない他の領域に挑戦することを考えていたそうです。

「訪問看護は本当に選択肢にありませんでした。知り合いもいなかったですし、自分が在宅に行く未来は想像していなかったですね」

そんななか、病院で偶然再会した先輩から「訪問看護に興味はない？」と声をかけられたことが大きな転機となりました。

「そのとき会った管理者さんが本当に素敵な方で、“こういう働き方もあるんだ”と知るきっかけになりました」

こうして難波さんは、訪問看護という新しい世界に飛び込みました。

未経験で感じたギャップと、1対1の看護で得た気づき

―入職後、訪問看護にはどんな印象を持たれましたか。

「まずギャップは確かに感じました。医療機器が必要な場面は病院に比べて少なくて、今までの経験だけでは対応しきれない方も多く、自分のアセスメントの浅さに気づかされました」

病棟では医師がすぐそばにいる環境が当たり前。ですが、訪問では看護師の判断がそのまま利用者さんの安心に直結します。

「深掘りして考えることの大切さを改めて感じましたね」

一方で、“訪問だからこそ見える魅力”も強く感じたそうです。

「患者さんといろんな話をしますね。昔の話や戦争の話、ご家族の話など、その方の人生がまるごと伝わってくるような感覚で……。病棟ではなかなか聞けなかった物語に触れられるのは、訪問看護の大きな魅力ですね」

1対1で向き合うからこそ、その人の背景に寄り添いながら看護ができる──。
難波さんはその魅力を丁寧に語ってくれました。

管理者としての歩みと、スタッフとつくるチーム

―管理者としての歩みはいかがでしたか。

「本当に、分からない中で任せていただいた形でした」

入職後まもなく、事業所の体制が大きく変わる出来事があり、環境が大きく変化した時期があったそうです。
その変化のなかで、気づけば事業所をまとめる立場を担うことになりました。

「上昇志向が強かったわけではありませんでした。でも、必要としていただいたので。スタッフに支えてもらいながら、一つずつ積み重ねてきた感じです」

難波さんは「スタッフからのボトムアップで育ててもらった事業所」と語ります。
互いの意見を尊重しながら形にしていく、その積み重ねが地域からの信頼にもつながりました。

「特別なことをしているわけではないですが、少しずつ評価されたり、地域とのつながりが深まったりしていくのは嬉しいですね」

忘れられない利用者さんとの時間

―記憶に残っている利用者さんのエピソードはありますか。

難波さんは胸に手を当てながら、少し考えていました。「印象に残っている利用者さんはたくさんいるんですけど…」と語ってくれたのは、強い不安を抱える認知症の利用者さんのことでした。

認知症の行動・心理症状（BPSD）が強く現れ、罵声が出てしまうこともあったと言います。

「スタッフも心が折れそうになるほど大変な場面が多かったです」

それでも諦めず、少しでも安心してもらえるように工夫を続けました。

ユニフォームの色を変える。
音楽を流す。
能楽の動画を一緒に観る。
会話の中から“好きな話題”を拾う――。

「できることは何でも試しましたね。少しでも関わりやすくなるように」

最期を迎えられたとき、ご家族や外部の関係者から「ありがとう」という言葉が寄せられたそうです。

「スタッフも本当に頑張ってくれて…みんなで乗り越えた時間でしたね」

その言葉に、難波さんの優しさと誠実さがにじんでいました。

働きやすさを支える職場づくりと教育体制

―働き方や教育面で工夫している点を教えてください。

スターク訪問看護ステーション目黒では、スタッフが無理なく働けるよう、柔軟な働き方を大切にしています。フレックスタイム制や有休を使った調整がしやすく、産休・育休も取得しやすい環境です。現在も育休中のスタッフがおり、ライフステージに合わせて働き方を選べる体制が整っています。

「受診やお迎えが必要なときは相談してもらい、できる範囲で調整しています。バランスを見ながら、みんなで支え合っていますね」

教育においては、“自分で考える力を育てる”ことをとても大切にしています。

「同行すると、つい自分で全部やってしまいそうになるんです。でもそうするとスタッフの成長の機会を奪ってしまうので、考えたことの背景や仮説を聞きながら、一緒に整理するようにしています」

訪問看護未経験で入職するスタッフも多いこともあり、一人ひとりのペースに合わせて丁寧にフォローする文化が根づいているのもスターク訪問看護ステーション目黒の特徴です。

これから訪問看護を目指す方へのメッセージ

「在宅に来るときは、不安があって当然です。でも、一つずつステップアップできますし、みんなで支えながら成長できます」

難波さんが大切にしているのは、寄り添う姿勢と、愛情を込めた関わり。

「その人の希望に寄り添って看護ができたら、きっと自分にも返ってきます。一緒に学びながら“優しい医療”をつくっていけたら嬉しいですね」

訪問看護は、自分の関わりがそのまま相手の暮らしに届く仕事。
難波さんの静かな熱が、これから挑戦したい看護師さんの背中をそっと押してくれるように感じました。

インタビュアーより

今回お話を伺い、難波さんの“誠実さ”と“静かな熱量”が一番心に残りました。
難波さん自身も訪問看護未経験から入り、不安を抱えながらも丁寧に積み重ねてきた歩みは、これから在宅に挑戦したい方にとって大きな励みになると感じます。

また、スタッフを信じて育てようとする姿勢や、利用者さんへの細やかな関わりからは、このステーションの温かい雰囲気が自然と伝わってきました。

「迷いながらで大丈夫。一緒に成長していける場所」——そんな難波さんの想いが、この記事を通じて少しでも読者の背中を押せれば嬉しいです。

事業所概要

事業所名：スターク訪問看護ステーション目黒
住所：東京都目黒区上目黒３丁目１番４号　中目黒グリーンプラザビル５階