主任看護師の目標管理シートの書き方と例文4つ!看護スタッフとの違い

「主任になったけど、目標管理シートってどう書けばいい?」「看護スタッフと主任って目標の書き方が違うの?」
看護スタッフと違って、主任看護師は求められる視点や役割も変わり、何を書けば評価されるのか迷ってしまう方も多いでしょう。
しかし、ポイントをおさえれば目標管理シートは難しいものではありません。正しく活用することで、日々の業務の質を高めるだけでなく、将来のキャリアアップにもつながります。
この記事では、主任ならではの役割や看護スタッフとの違いを明確にしたうえで、評価につながる目標管理シートの書き方や目標の立て方について具体例を交えて解説します。すぐに活かせる情報を知りたい主任看護師は、ぜひ最後までお読みください。
主任看護師の目標管理シートの書き方
主任看護師として目標を設定する際は、次を意識することが重要です。
- チーム全体の成果につながる目標を意識する
- プロセスも評価対象になることを意識する
- 「SMART」を意識した目標を書く
具体的に解説します。
チーム全体の成果につながる目標を意識する
主任看護師が目標を検討する際、チームのレベルアップを意識しましょう。
日本看護協会の「病院看護管理者のマネジメントラダー」によると、主任看護師には「自部署の看護の質管理」や「看護師の育成」が求められるからです。
たとえば「新人看護師向けに月1回の勉強会を開催し、業務の理解を深める」といった目標が一例としてあげられます。
こうした目標は「看護師の育成」や「業務の質向上」につながり、主任看護師の立場にふさわしい内容といえるでしょう。
プロセスも評価対象になることを意識する
主任看護師が目標管理シートを作成する際、目標達成までの過程も評価の対象となることを意識してください。
目標達成のための実践を、次のように具体的に組み込むことがポイントです。
- 毎月のミーティングによりケアの質向上を目指す
- 意見を集めて手順書を作成する
プロセスに焦点を当てることで、目標達成に向けた取り組みや主任看護師としての役割が明らかになるでしょう。
「SMART」を意識した目標を書く
主任看護師が目標を立てる際は「SMART」に沿って書けると評価しやすくなり、目標を実現できます。
- S(具体性):誰が、何を、どのように実施するかを明確にする
- M(測定可能性):成果が数値で測定できるように設定する
- A(達成可能性):現場の状況に応じて無理なく実現できる内容にする
- R(関連性):組織の目標や看護方針とリンクさせる
- T(期限):実施・評価の期限を明記する
たとえば「投薬研修を年4回おこない、患者さまへの投薬ミスを前年より20%減少させる」といった目標です。
このように、わかりやすい目標を立てることで、評価や進捗管理が簡単になります。目標を達成できなかった場合でも、SMARTを意識したものであれば、分析もしやすい傾向です。
主任看護師の目標管理シートの例文4つ|項目ごとに解説
主任看護師が目標管理シートに記載すべきおもな項目と、記載例を解説します。
- 業務改善
- 後輩育成
- 医療安全
- 患者満足度
紹介した内容をもとに、施設や部署の実情に合った内容に変更して書いてください。
1.業務改善
業務改善は、看護の質と業務効率の向上を図る重要な視点です。
とくに、インシデントの削減やマニュアル整備などの取り組みが求められます。たとえば、次のような目標が良いでしょう。
- 転倒リスクの高い患者さまを対象としたマニュアルを3月までに作成して周知する
- 毎月インシデント・ヒヤリハット報告を振り返り、インシデント件数を前年から10%削減する
現場で感じている課題をもとに数値目標を設定することで、普段の仕事に役立つような改善につなげられます。主任看護師として、看護スタッフが取り組みやすく、しかも結果が見える目標にすることが大切です。
2.後輩育成
後輩育成は、組織の未来を担う人材の成長を支援する取り組みです。
とくに、新人看護師の早期離職を防ぐために、次のような目標を立てたうえでメンター制度やプリセプター制度などを活用して、成長をサポートする姿勢が求められます。
- 新卒看護師3名に、1対1でメンター制度を運用する
- 月2回の面談を実施し、半年後に不安の解消度をアンケートで可視化する
後輩看護師の不安を早期に把握し、継続的に支援することで、心理的な負担を軽減し職場に適応できるようにします。これにより、安心して働ける環境となり離職率の低下が期待できます。
3.医療安全
医療安全の目標には、リスクの早期発見と予防、情報共有が不可欠です。
夜間帯は、看護師の人数が限定されるため、より一層のリスク管理と情報共有が重要になります。そのため、次のように重点的な取り組みが欠かせません。
- 申し送りを効率化させ、夜勤帯のヒヤリ・ハット件数が前年度比15%減を目指す
- 月1回、報告事例を共有し学びを深める場を設ける
これらの目標を達成し、日々の安全なケアを実現するためには、チーム全体でリスクを意識し、積極的に情報を共有できるような仕組み作りが重要です。
4.患者満足度
患者満足度の向上は、看護サービスの質を測るうえで欠かせない指標です。
患者満足度は、単に患者さまの評価をあらわすだけでなく、提供した医療サービスの質を客観的に測れるからです。たとえば、次のよう順で取り組みます。
- 入院患者さまの満足度調査を4月に実施する
- 結果をもとに6月までに接遇の改善策を講じる
- 3月までに患者満足度を90%以上に引き上げる
具体的な数値目標と期限を設けることで、成果がみえやすく、継続的なサービス向上につなげられます。
主任看護師と看護スタッフの目標管理シートの違い
主任看護師と看護スタッフでは、業務内容や求められる役割が異なるため、目標管理シートに書くべき内容にも違いがあります。
ここでは、視点や責任の違いに注目して解説します。
業務の範囲と責任の違い|主任はマネジメントが必要
一般看護師はおもに日々のケアや担当業務に専念します。対して、主任看護師はチームの業務がスムーズに進むよう、マネジメントや調整、教育、安全管理などの役割を担います。
項目 | 主任看護師 | 看護スタッフ |
おもな役割 | チームのまとめ役とケアの質向上 | 患者さまへの看護ケアの提供 |
業務の視点 | チーム・病棟全体の業務を管理 | 個人の業務を中心に対応 |
指導・教育 | 看護師の能力育成・教育体制の構築 | 新人や後輩の指導を担当 |
看護の質管理 | マニュアル化・業務改善で質向上 | 実践を通じた質の維持 |
安全管理 | 状況に応じた判断で現場を調整 | 上司の指示にしたがって対応 |
このように主任看護師は個人目標ではなく、チーム全体の看護の質を高めるための目標が必要です。
目標設定における視点の違い|主任はチーム成果も重視
看護スタッフは「自分のスキルの習得」や「患者さまとのかかわり方の改善」など、自己成長を重視します。
一方、主任看護師は「看護師育成」や「チーム全体の安全対策」など、周囲への影響や部署の成果に目を向けた目標設定が必要です。具体的な違いは、次の表を参考にしてください。
項目 | 主任看護師 | 看護スタッフ |
おもな視点 | チーム全体の成果と運営 | 自己成長や日々の業務 |
目標の範囲 | ・チームの質向上 ・業務改善 ・教育 ・マネジメント | ・自分のケアや処置のスキルアップ ・患者さまの対応力の向上 |
具体例 | ・医療安全を徹底する ・看護師育成の仕組みを確立する | ・患者対応の質を上げる ・静脈注射の精度を高める |
チームへの効果 | 部署に影響するような働きかけ | 自分の行動の改善を重視 |
このように、主任看護師は「自分が動くことで、部署や組織がどう変わるか」までを視野に入れ、目標を設定しましょう。
主任看護師が陥りがちな目標管理シートの課題とその解決策
目標管理シートを作成する際、主任看護師は次のような課題に直面しがちです。
- 抽象的すぎる目標
- 高すぎる目標
- 現場の状況に合わない目標
これらの課題に対処するには、押さえるべきポイントがあります。
よくある課題とその具体的な解決策を紹介するため、目標設定をスムーズに進める参考にしてください。
抽象的すぎる目標
「質の高い看護を目指す」といった抽象的な目標は、具体的な行動や成果が見えにくいため、何をすべきか、どこを改善するべきかがあいまいで、実践しにくく評価が難しくなりがちです。
これを解決するためには、次のように数値化や具体的な方法を明記することが重要です。
- 患者満足度90%以上を目指す
- アンケート調査を年2回実施する
数値を入れ込むことで、目標達成への道筋が明らかになり、看護スタッフのモチベーションも維持しやすくなるでしょう。
高すぎる目標
目標が高すぎると、看護スタッフの負担が大きくなりがちです。
達成できなかった場合「自分たちの努力が足りなかった」とフラストレーションがたまったり、意欲の低下につながったりと、逆効果になるからです。
たとえば「転倒のインシデント件数をゼロにする」という目標は、患者さまの状態も影響するため現実的ではありません。
そのため、看護スタッフが成果を実感しながら前向きに取り組めるよう、達成可能な範囲で目標設定することが重要です。
現場の状況に合わない目標
現状とかけ離れた目標は、看護スタッフのモチベーションを低下させる原因になります。
なかでも、主任看護師と看護スタッフとのコミュニケーション不足により現場の状況が把握できていないと、目標が現実的でなく意欲を削いでしまうかもしれません。
たとえば「患者さまに、高度な看護技術を提供する」という目標の場合、看護師数や業務量などが十分に考慮されず、効率的ではなくなる可能性があります。
「患者さまごとのケア計画を見直し、月に1回チームで共有する」という目標であれば、現場の実情を反映しており、看護スタッフが協力して取り組む意欲を持ちやすくなるでしょう。
目標管理シートは主任看護師のキャリアアップにも直結
目標管理シートは単なる評価ツールではなく、主任看護師のキャリアデザインにもつながる重要な資料です。
目標管理シートを適切に作成できれば、自分の成長を把握し、次のステップを見据えるための指針となるでしょう。
目標はキャリアの道しるべになる
目標を立てて実行することは、将来のキャリア形成につながります。
たとえば「3年後に看護師長を目指す」や「5年以内に認定看護師の資格を取得する」という長期的な目標を立てれば、必要なスキルや経験が明らかになります。
目標があることで業務にも目的意識が生まれ、自分の成長を実感できるでしょう。
振り返りが自信と成長につながる
目標を定期的に振り返ることで、自分の強みや弱みを客観的に把握できます。
たとえば、半年ごとに進み具合を見直すことで、うまくいった点や改善すべき点が明らかになります。
この振り返りが、上司と期末に面談する際の強みとなり、自分の成果をアピールできるでしょう。
自己評価がうまくいくと、次の目標設定にも役立ち「さらに高い目標に挑戦しよう」といったモチベーションが生まれます。
キャリアアップに向けて、目標を振り返りながら成長することが、主任看護師としてのステップアップにつながります。
目標管理シートを主任看護師の「評価されるツール」にしましょう
主任看護師が評価される目標管理シートの作成は「チーム全体への貢献」と「具体的な目標設定」が重要なポイントです。
誰が見てもわかるような、具体的な目標にすることで、組織からの信頼も高まり、主任看護師としての評価が得られるようになります。
また、業務を通じて成長し、キャリアアップを目指す道しるべとしても、目標管理シートは活用できます。
この記事で紹介した内容を参考にして、目標管理シートを実践に取り入れてみてください。
<参考サイト・文献>

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