内視鏡看護師とは?3つの仕事内容と資格メリットを徹底解説

「内視鏡看護師ってどんなことをしているの?」「内視鏡室での仕事は自分に向いているかな?」
こうした悩みを抱える看護師の方はいませんか。
内視鏡看護師は、消化器系の病気や最新の内視鏡治療に携われる機会が多いため、専門性が高くスキルアップが叶いやすい分野です。
とはいえ、実態が想像できないと異動や転職する勇気も出ませんよね。
この記事では、内視鏡看護師の仕事内容や必要なスキル、資格取得の方法について詳しく説明します。「内視鏡看護師に興味はあるけど一歩踏み出せない」という方の後押しとなれたら幸いです。
内視鏡看護師とは
内視鏡看護師とは、病院の内視鏡センターや内視鏡を専門とするクリニックなどで、検査や処置の準備、サポートをおこなう看護師です。ここでは必要な資格と役割、気になる年収を解説します。
内視鏡看護師に必要な資格
看護師免許があり内視鏡室に配属されると、内視鏡看護師として働けます。
ただし、内視鏡室では上部内視鏡(胃カメラ)や下部内視鏡(大腸カメラ)などの検査がおこなわれるため、これら検査の知識を踏まえて、患者さまをケアすることが求められます。
内視鏡看護師の役割
内視鏡看護師の役割は、おもに次の2つです。
- 医師や内視鏡技師の補助
- 患者さまやご家族のサポート
内視鏡室の看護師は、医師や内視鏡技師が検査や治療をスムーズにおこなえるよう補助します。具体的には、内視鏡検査や治療の準備、鎮静剤の使用にともなう患者さまの状態変化の観察などがあげられます。
患者さまやご家族に検査や治療に関する補足説明や指導をおこない、不安の軽減に努めるサポートも重要な役割です。
検査中や検査後の観察をおこないながら、患者さまが安心して検査を受けられるように支援します。
内視鏡看護師の給料
内視鏡看護師の給料は、夜勤のある病棟看護師と比較して低くなる可能性があります。
基本的に、内視鏡室での検査や手術は日中におこなわれ、夜勤手当がつかないからです。
一般的な看護師の年収は、厚生労働省の調査によると508万1,700円です。ここから夜勤手当を引いた額が、内視鏡看護師の年収と推測できます。
看護師の平均夜勤手当は、次のとおりです。
夜勤形態 | 平均夜勤手当額 |
三交代制 準夜勤 | 4,234円 |
三交代制 深夜勤 | 5,199円 |
二交代制 | 1万1,368円 |
たとえば、二交代制の場合、平均夜勤回数が1ヶ月4.9回であるため、年間の夜勤手当は66万8,436円となります。この分の夜勤手当がなくなるため、内視鏡看護師の年収は看護師全体の平均よりも低くなるでしょう。
内視鏡室の看護師の仕事内容
内視鏡看護師の仕事内容は、以下のとおりです。
- 検査・治療の準備と進行
- 患者さまへの説明とフォロー
- バイタルチェックと緊急時対応
ひとつずつ見ていきましょう。
検査・治療の準備と進行
内視鏡看護師は、内視鏡検査の準備をおこない、医師の診察をサポートしたり患者さまをケアしたりします。検査がスムーズに進むように、機器のセッティングや必要な器具の準備を整えることも内視鏡看護師の役割です。
また、鎮静剤の点滴や咽頭麻酔の準備も看護師が担うことが多い傾向にあり、患者さまの状態を確認しながら適切に対応することが求められます。
患者さまへの説明とフォロー
患者さまやご家族に対して、検査や治療に関する医師からの説明の補足や、精神的なフォローをおこないます。
具体的な内容は、次のとおりです。
タイミング | ケア内容 |
検査・治療前の説明 | ・検査や治療の目的、手順、注意点などを丁寧に説明し、患者さまが納得したうえで検査に臨めるよう支援 ・同意書の取得や質問に答えることで信頼関係を構築 |
検査中の声かけ | ・患者さまが緊張や不安を軽減できるよう、検査中も安心感を与えられる声かけを実施 ・適切なタイミングで検査の進行状況を伝達 |
検査後のフォロー | ・鎮静剤の影響が残る場合は覚醒まで観察し、検査後の日常生活についてアドバイス ・帰宅後の注意事項を伝え、不安が残らないよう対応 |
円滑な処置には、患者さまやご家族の正しい理解が欠かせません。
医師の説明をかみ砕いたり、検査中に安心できる声がけをおこなったりして、患者さまやご家族を支えます。
バイタルチェックと緊急時対応
検査中や検査後にバイタルサインを確認し、異常があれば迅速に対応します。即座に対応するためには、あらかじめ次のことを学んでおく必要があります。
- バイタルサインの正常値と異常値の理解
- 内視鏡検査・治療にともなう偶発症の種類と対策
- 救急処置(ICLS・BLS)の手順
- 内視鏡機器の操作と管理方法
- 薬剤(とくに鎮静剤)の作用と副作用
- 災害時のトリアージ方法
事前知識を深めつつ、起こりうる事態を予測して介助することが大切です。
看護師が内視鏡室で働くメリット
内視鏡看護師として働くメリットは、つぎのとおりです。
- 専門知識や技術が身につく
- 仕事にやりがいを感じやすい
- 日勤のみの場合ワークライフバランスがとりやすい
内視鏡看護師ならではの魅力を見ていきましょう。
専門知識や技術が身につく
内視鏡室で働くことで、おもに消化器系の病気に関する専門知識が深まり、内視鏡検査や治療に関する高度な技術を習得できます。
具体的には以下があげられ、多岐にわたるスキルを磨けます。
- 内視鏡の操作補助
- 鎮静管理
- 検査後の患者ケア
また、最新の医療機器や技術に触れる機会が多く、継続して専門性を高められる点も魅力です。
仕事にやりがいを感じやすい
内視鏡検査は、がんの早期発見や消化器系の病気の診断・治療に直結するため、患者さまの健康を支える重要な役割があります。
とくに、大腸ポリープの切除や異物除去など、患者さまの負担を軽減する処置に携われるため、治療に直接かかわっている実感を得やすい仕事です。
医師との連携が密接で、チーム医療の一員としての責任感や達成感を味わえる点も、やりがいにつながります。
日勤のみの場合が多くワークライフバランスがとりやすい
内視鏡室の勤務は、病棟勤務に比べて夜勤やオンコールの負担が少なく、日勤のみの職場が多い傾向です。
規則的な勤務時間が確保されやすいため、家庭やプライベートとの両立がしやすく、ワークライフバランスを重視した働き方が実現できます。
子育て中の看護師やライフスタイルを重視したい看護師にとって、働きやすい環境といえるでしょう。
内視鏡室の看護師はきつい?辞めたいと思う瞬間
内視鏡室で働く看護師は、メリットも多い一方で「きつい」「辞めたい」と感じる場面もあります。
デメリットを知っておくと、心の準備ができるためギャップを感じにくくなるでしょう。
常に時間に追われている
内視鏡室では、複数の患者さまの検査や治療が分刻みでスケジュールされており、時間に追われると感じる看護師も少なくありません。
また、検査の準備や片付けも含めると業務は慌ただしくなり、心に余裕をもちにくく「きつい」と思う看護師もいるでしょう。
ルーティンワークでメリハリがない
内視鏡室の仕事は、毎日同じような流れで進むことが多く、変化のある環境で働きたい看護師にとっては物足りなさを感じることがあるでしょう。
検査の補助や器具の準備・消毒など、決まった作業をくり返すため、刺激を感じにくくやりがいをもてない看護師もいます。
基本的な看護技術が身につきにくい
内視鏡室では、採血や点滴管理、バイタルサイン測定などの一般的な看護技術を実践する機会が限られています。
とくに、新人看護師や経験の浅い看護師にとっては、基本的な看護技術を習得する場としては不向きと感じるかもしれません。
病棟勤務と比べて、患者さまとの長期的な関わりも少なく、全身管理の経験を積む機会が限られるため、将来的なキャリアに不安を感じる看護師もいるでしょう。
内視鏡室の看護師がスキルアップできる資格
内視鏡看護師がスキルアップできる資格として、以下があげられます。
- 消化器内視鏡技師
- カプセル内視鏡読影支援技師
どちらも臨床での実践経験が必要ですが、その分自身の成長につながる資格です。それぞれの資格を詳しく解説します。
消化器内視鏡技師
消化器内視鏡技師とは、日本消化器内視鏡学会が認める資格です。
消化器内視鏡技師の資格を取得するには、臨床経験や学会への参加などの条件をクリアし、年1回おこなわれる資格認定試験に合格しなければなりません。
資格を取得した後は、医師の指示を受けながら内視鏡の操作し、摘出した検体が検査できるようになります。
カプセル内視鏡読影支援技師
カプセル内視鏡読影支援技師は、日本カプセル内視鏡学会(JACE)が認定する資格です。
この資格は、カプセル内視鏡検査の専門知識と読影技術を持つ技師を養成し、優秀な者を認定することで、カプセル内視鏡検査および研究の円滑化を目的としています。
資格には「小腸CE読影支援技師」と「大腸CE読影支援技師」の2種類があります。
CE読影支援技師は、医師の監督指導のもとカプセル内視鏡の画像診断を支援するのが役割です。看護師の資格があり一定の条件を満たして必要書類をそろえると、資格取得できます。
*CE(capsule endoscopy):カプセル内視鏡
内視鏡看護師が活躍する場所
内視鏡看護師は、以下の場所で活躍しています。
- 病院の内視鏡室
- 内視鏡室専門・消化器専門のクリニック
それぞれ解説します。
病院の内視鏡室
総合病院や大学病院などの内視鏡室では、検査や治療の件数が多く専門的な技術や知識を習得しやすい環境です。
胃カメラや大腸カメラの検査だけでなく、止血処置やポリープ切除、ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)などの幅広い経験ができます。
また、消化器内科だけでなく、呼吸器内科や外科と連携しながら気管支鏡検査や内視鏡的手術支援をおこなうケースもあり、多岐にわたる症例を経験できます。
内視鏡専門・消化器専門のクリニック
内視鏡専門クリニックや消化器内科クリニックでは、胃や大腸の内視鏡検査がおもな業務です。
病院と比べると検査の種類は限定されるものの、検査のスピードや患者対応の質を高めることに重点が置かれるため、効率的な動きや患者さまへの説明スキルが磨けます。
また、クリニックの多くは日勤のみであることが多く、ワークライフバランスを重視したい看護師にとっては魅力的な職場環境といえるでしょう。
内視鏡室の看護師に関するよくある質問
内視鏡看護師について、よくある質問にお答えします。疑問を解消し、安心して内視鏡看護師への道に進みましょう。
内視鏡室の看護師は未経験でもなれますか?
未経験でも内視鏡室の看護師として働くことは可能です。
内視鏡検査の介助や患者対応の流れは、実践を通じて習得することが多くあります。また、多くの病院やクリニックでは、入必要な知識やスキルを学べる研修制度を設けています。
先輩看護師のフォローを受けたり、勉強会へ参加して知識を深めていけたりすると、経験がなくても安心して働けるでしょう。
内視鏡室は閉鎖的な環境になりやすいですが、人間関係はどうですか?
内視鏡室は少人数で業務をおこなうことが多く、人間関係が密になりやすい環境です。そのため、スタッフ同士の関係が良好であれば働きやすい職場になります。
一方、少人数ならではのコミュニケーションの難しさを感じることもあるかもしれません。
しかし、内視鏡室の業務は検査や処置が時間どおりに進むことが求められるため、自然と協力しながら働く体制が整っています。
職場によって雰囲気は異なるため、事前に見学をしたり、転職サイトの口コミを参考にしたりすると良いでしょう。
内視鏡看護師の経験は、病棟やほかの診療科でも活かせますか?
内視鏡看護師としての経験は、病棟や別の診療科でも活かせます。
とくに、消化器系の病気の知識が深かったり内視鏡機器の扱いに慣れていたりすると、消化器系の病棟勤務や救急看護の現場で役立つでしょう。
また、患者さまの苦痛を軽減するための声かけや、鎮静剤を使用した検査時の観察力も、ほかの診療科で十分応用できます。
内視鏡室で働く前に看護師がやるべきことには何がありますか?
内視鏡室で働く前に、次について学んでおいてください。
学ぶべきこと | 内容 |
予備知識を身につける | ・食道~大腸の解剖生理学 ・前処置薬剤の知識(腸管洗浄剤の作用機序) ・基本的な感染予防策(スタンダードプリコーション) ・洗浄・消毒のガイドラインにもとづいた感染管理 |
内視鏡看護師の「クリニカルラダー」を活用する | ・看護師の能力を5段階で評価可能 ・内視鏡看護師が未経験である場合は、レベルⅠ(新人)、レベルⅡ(一人前)を参考にチェック |
未経験の分野がわかれば、内視鏡室に配属になったときに学ぶべき優先順位がわかります。
効率的に知識・技術を習得するには、不足部分をおぎなう形で学習を進めることをおすすめします。
内視鏡看護師の求人はどこで探せますか?
内視鏡室の看護師は、次の方法で見つけられます。
- 看護師専門の転職サイト
- 看護師専門の転職エージェント
- 病院の公式採用ページ
たとえば、病院勤務を希望する場合は「消化器内科」や「内視鏡センター」などのキーワードで検索すると、求人が見つかりやすいかもしれません。
また、転職エージェントでは非公開求人を紹介してもらえたり、面接対策のサポートを受けられたりするため、効率的に求職活動を進められるでしょう。
内視鏡看護師として専門性を活かし、自分に合う充実した働き方を目指そう
内視鏡看護師は、専門的な技術と知識を活かし、さまざまな医療現場で活躍できる職種です。
内視鏡看護師としての専門性を磨きながら、働く環境や条件を見直すことで、より充実したキャリアを築けます。
自身の強みや希望を明確にし、最適な働き方を選択しましょう。

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