利用者さんとご家族に寄り添う看護を~長く働ける職場環境を大切に 訪問看護ステーション あすなろ幸手 坂齋さんにインタビュー

病棟に長年勤められ「訪問看護には興味がなかった」と話される坂齋様。今では訪問看護ステーションの管理者として、利用者様やご家族に寄り添った看護の提供とスタッフの働きやすい職場作りに注力されています。
坂齋様が訪問看護の道に進まれた経緯や管理者として大切にしていることを伺いました。
在宅を知らなかった病棟時代 訪問看護に興味を持つようになったきっかけ
看護学校を卒業して25年間病院に勤務していました。25年経ったあたりで、子どもの学校関係の事情で病院勤務が厳しくなってきて……当時は夜勤もしていたし役職もついていたので家庭との両立がすごく大変だったんです。それで病院勤務を休もうと決意して、特別養護老人ホームへ転職しました。
病院勤務時代は高齢者の患者さんとは短期間でしか関わりがなく、入院期間も短いので、患者さんの退院後の生活を深く考えたことがありませんでした。だから施設で働いてみて初めて「こんな世界があるんだ」と新たな発見でしたね。
ただ「病院で見送った方々はここ(施設)に来る人もいるけれど、他にはどこか行くところがあるんだろうか」と疑問も感じていました。自宅に戻る選択肢もあるんだろうなとぼんやりは思っていましたね。
施設勤務を3〜4年経験した後、やっぱり再び病院に戻ることにしたんです。今度は一般病棟ではなくて、療養型。そこで高齢者が、退院後に施設か在宅かという選択をする場面で「こんなに身体の硬い高齢者が在宅にいくのか……」と考えるようになりましたね。そこで初めて訪問看護に興味を持つようになったんです。
当時はコロナ禍でもあったので、入院中の高齢者が家族に会えないまま病院で亡くなるケースもありました。そうした状況をみて「自分はこのままでいいのかな」と自問していたところ、友人から「訪問看護をやってみないか」と声をかけてもらって、まずは短期間、訪問看護の経験をさせてもらいました。
実際に訪問看護の現場で、患者さんが病院から自宅に戻って生活している場所に、私たちが入らせてもらうという体験を通して「在宅では看護師がこんなこともできるのか」と、世界が広がりましたね。この経験がきっかけで訪問看護の世界に入り、2022年の12月に当ステーションが開設される際、管理者として配属されました。
訪問看護の難しさと喜び 病棟時代との自分に変化
訪問看護で難しいと感じるのは、ご家族をどのようにして巻き込んでいくかですね。病院では家族との関わりはそこまで多くなく、スタッフ同士で考えながら進められますが、訪問看護ではご家族の力も欠かせません。
「利用者さんがうまく生活していくためにはどうしたらいいか」「家族がどういう風に関わってくれるか」考えることがたくさんあるので大変ですが、利用者さんの状況が良くなったときはうれしいですし、やりがいを感じます。
ご家族と一緒に進めていくための方法を考えることはなかなか難しいですが、さまざまな視点から考えられるので楽しいですね。
ただ、ある程度の経験がないと、ご家族に提案や指導をするときに大変だなとは感じます。たとえば、病院は医師が近くにいるので、すぐに質問したり聞いたりできるし、処置やケアに使うものもなんでもそろっていますよね。
でも、訪問看護では、訪問診療の先生はいますが頻繁に会うわけではないので、細かいことをすぐに伝えたり聞いたりできません。それに処置やケアに必要なものがすべてそろっているわけでもないから「あるものでやる」という発想が大切です。
医療者側からしたら「買えばいい」って思うかもしれないけれど、自宅にいる方はお金の制限もあるんですよね。過去の自分は「あれ買ってください」とか「こういう風にやってください」とか、ご家庭の事情も考えずに言ってたなと……病院から訪問看護にきて、自分自身の意識も変わりました。
病院勤務のときに在宅の制度やサービスの知識がもう少しあれば、患者さんが自宅でうまく過ごせるようにサポートできたのではないかと、過去の自分に後悔することがあります。

在宅看取りの経験 ご家族と向き合い、寄り添うことを大切に
ご家族のサポートでとくに難しいと感じるのは、ご家族に「迷い」があるときですね。たとえば、利用者さんが最期を迎えようとしているときにご家族が迷われているとき。自宅に戻ったからには自宅で看取りたいという気持ちもあると思うのですが、迷われるご家族もいらっしゃいます。
ただ、私たちが進めるわけにはいかないので、ご家族が判断しなくてはいけないところなのですが、心の中では「自宅で最期を迎える選択肢もあるんだよ」って思ってしまいますね。
ご家族が悩まれているときに、どうお話をしていくか迷うことはたくさんありますが、そういうときにはご家族に寄り添うことを大切にしています。
利用者さんが在宅で亡くなられた後に「ご本人も自宅で最期を迎えられてよかったでしょうね」とご家族にお伝えして「本当によかった」と言っていただけたときが一番報われる瞬間です。これからも利用者さんやご家族としっかり向き合ってお話をすることを大切にしていきたいと思っています。
看取りの場面に出会いたくない、怖いという気持ちを持つ看護師さんもいると思います。私も最初は怖かったですが、経験を積んでくると「こういう場面ではこのような対応が必要だ」とか少しずつ分かってくるんです。
もちろん、今でも悩みは尽きませんが、そのような状況で大事なのが相談できる環境だと考えています。戻ってくる場所、相談できる場所が大事だなと。悩んだらその場で即答せず、事務所に持って帰ってきてと伝えています。みんなで話し合ってから答えを出し、利用者さんに伝えるようにして、スタッフには一人で悩まなくていいことを伝えているようにしていますね。
管理者として心がけていること
当ステーションは2022年に開設し、現在3年目に入りました。開設当初から管理者を務めていますが、最初は軽い気持ちで入った世界でした。そのため当初はスタッフとのコミュニケーションにとても戸惑いましたね。病院ではスタッフ同士がすぐ近くにいるので声かければすぐ伝えられますが、訪問看護ではみんな散らばってしまうので「どんなことをしているのか」「何を考えているのか」把握しづらい状況でした。だからコミュニケーションはとても大切にしていて「今日は〇〇さんどうだった?」って私から声をかけるようにしているので、スタッフも状況の写真を撮って共有してくれたりします。
ステーションの環境では、スタッフが迷わないようにできるだけ仕事を分かりやすくするように心がけています。たとえば、私は物忘れしやすいので、ホワイトボードにやることや忘れてはいけないことを書き出して、みんなが見ればわかるようにしています。まだまだ試行錯誤しながら進めていますよ。
スタッフが気持ちよく働ける職場に
当ステーションでは毎朝掃除をしているんです。開設当初、私を含めスタッフが4人しかいませんでしたが「掃除はちゃんとしよう」とみんなで話し合ったことから始まりました。
現在は人数が増えましたが、掃除の習慣は変わらず続いています。朝はきれいに整えて始めたいと思いがあるので、この習慣は崩したくないですね。気持ちよく働けることを大切にしたいです。
また、遊び心のあるステーションでありたいと思っています。訪問から疲れて事務所に戻ってきたときに、ちょっとした癒しがあればいいですね。みんなで和気あいあいと続けていってほしいと思っています。
私自身が心がけているのは、スタッフはそれぞれ個性があるので、一人ひとりに合わせて伝え方を変えたり、考えたりすることです。訪問看護の経験年数が長い人と短い人がいるので、どのように進めていくかを考え、利用者さんによっては二人体制で訪問してもらうようペアを考慮したり、ご家族の協力が得られるところであれば1人で行ってもらったりしています。
私が判断することもありますが、スタッフのレベルも上がってきているので、もう誰が行っても大丈夫な部分もあり、みんなで決めてもらうこともありますよ。

スタッフに安心して働いてほしい バッグアップする体制づくり
現在のスタッフで一番若いのが40代で、あとは50代が中心です。私よりも訪問看護の経験が長いスタッフもいるので、私もわからないことは聞くし、相談することもあります。
訪問看護で必要なのは、うまく話せなくても挨拶ができ、仕事に丁寧に向き合えることだと思います。自分の思いで看護をするのではなく、利用者さんやご家族がいるからこそのものなので、自分を押し付けない姿勢が大切ですよね。
看護技術については、私もここで少しずつ身につけてきたので一緒に成長していけると思いますし、それよりも利用者さんに寄り添った看護ができることが重要だと思っています。他に何か資格を取りたいとなれば、そこは応援しますよ。
訪問看護のオンコールも不安や怖いと思う人もいるかもしれません。確かにオンコールは大変で、プレッシャーにもなります。だけど、最初に「やだな、しんどいな」と思うよりも、まずやってみると意外とできることもあります。最初から「無理だ」とこの世界に入るのをあきらめてしまうと、実際には楽しい世界もたくさんあるのでもったいないと思うんですよね。
そのため当ステーションでは、日勤帯と同じように、夜間帯でも不安があれば連絡するよう伝えています。スタッフが一人で悩まないよう、バックアップがあるから大丈夫と思ってもらえるような体制づくりを心がけています。
自分の負担がないわけではありませんが、スタッフのフォローは続けていきたいですし、利用者さんやご家族の不安もできる限り少ないようにしていきたいですね。まだ手探りの部分もありますが、サポートがあることで安心感や自信にもつながると思うので、ずっと続けていきたいと考えています。
インタビュアーより
最初は興味がなかったものの、病院を離れて在宅の重要性に気づき、訪問看護の世界に入られた坂齋様。利用者様やご家族に寄り添うことだけでなく、一緒に働くスタッフが楽しく働けるように配慮をされています。スタッフ様同士のコミュニケーションも活発で、フォロー体制もしっかり整っています。興味のある方はぜひお問合せください!
事業所概要
訪問看護ステーション あすなろ幸手
住所:埼玉県幸手市南3-23-30
運営方針・理念:
一.いつでも安心して生活できる家を提供します。
一.一人一人の感性を大切に、心を込めた介護サービスを提供します。
一.地域の中で信頼され、ふれあいの出来る施設を目指します。

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