地域で暮らす利用者の生活を豊かに~安心感のある職場環境を 東京白十字訪問看護ステーション 渡邉さんにインタビュー~

公開日:2025/02/15 更新日:2025/02/15
記事サムネイル画像

看護学科を卒業後、訪問看護の道へ進み、30年勤められている渡邉様。令和7年4月より管理者として活躍される予定です。これまで訪問看護に携わたれたなかでの経験や今後管理者として目指すところを伺いました。

訪問看護師のキャリアのはじまり―病気を抱える方々の自宅での生活を支えたい

私が看護師になったのは、平成6年のことです。当時、病院の実習で大変な思いをして、自分が病院で働くイメージがなかなか湧きませんでした。みんなが就職に向けて勉強や実習を頑張っているときに、私は看護師になるのを辞めようかと考えていたくらいでしたね。

私は高知女子大学家政学部看護学科の出身ですが、私たちの時代、実習で在宅のことを学ぶ機会はありませんでした。しかし、学生のときに参加していたサークル活動で障害を抱えた人たちと関わっていたんですね。そのなかで障害があっても自宅で生活しているのは見ていたので、なんとなく訪問看護のイメージだけがあったんです。

まだ訪問看護が有名になる前のことですが「自宅で看護を提供すること」ならイメージが湧くかもしれないという想いがありました。自宅で障害や病気を抱えながら暮らす人たちの生活を支えることに興味がありましたね。

そんなことを考えて学校の先生に相談したら、白十字施設の昭和時代のパンフレットを見せてくれました。そのときには平成7年4月1日に白十字の訪問看護ステーションが新設されることが決まっていたので「ここにします!」ってすぐ決めました。

希望通り平成6年に入職して、訪問看護ステーションが開設された平成7年の4月1日に異動し、そこからずっと続いているので、もう勤めて30年になりますね。20代の頃に入職して、3~4年は「このままでいいのかな」という想いもありましたが、やっぱり訪問看護に飽きないのでここまで続けてこられました。

「訪問看護は飽きないです」と笑顔で話される渡邉さん

訪問看護の『基本』を大切に。変化にも柔軟に対応

私たち訪問看護の役割は利用者さんの「療養上のお世話」なんですよね。病気や障害を抱えた利用者さんの生活の基本的なところがスムーズにいくように支えることです。たとえば呼吸、食事、排泄、清潔のサポートです。

今後の生き方や大事にしているものは利用者さん自身が決めていくことなので、そこは見守る姿勢をとることも大切だと思っています。訪問看護で利用者さんの基本となる部分を支えつつ、ヘルパーやリハビリスタッフなど多職種も関わりながら、生活がより豊かになるようにと考えています。

入職してから2~3年は、看護の基本を繰り返す日々に葛藤することもありました。『毎日同じことをして、看護の仕事とはこういうものなのか』と感じることもありましたが、経験を重ねるうちに利用者さん一人ひとりに合わせた看護の個別性が理解できるようになり、それからはまったく飽きることがなくなりましたね。

利用者さん一人ひとりが生きてきた歴史、生活のなかで大事にしているもの、家族との関係、ライフイベント…毎日ひとつも同じことがないんです。

5年、10年関わらせていただいている方も多いですが、このまま関わり続けられるんだろうなと思っていた利用者さんが、3ヶ月半の間に急にぐっと悪くなって…関係が突然終わったりすることもあります。利用者さんの変化に早めに気がついたら…と反省することもありますが、そこも含めて同じことの繰り返しでなくて、その都度変化に対応していく感じですね。

訪問看護の魅力は人生に寄り添えること

当ステーションは母体に病院があるため、利用者さんは高齢者が多いです。介護保険対象と医療保険対象とでは7対3くらいの割合でしょうか。

高齢の利用者さんで、関わりが長い方では20年ほどの付き合いです。介入当初40代だった利用者さんが60代で介護保険の年齢になり……時の流れをずっと一緒にみていけるのは感慨深いですね。「年取ったね」ってお互いに言ったりすることもありますよ。

家族でもないのに何十年も付き合って、変化を見せてもらえて……たとえば娘さんの結婚やお孫さんの誕生などもありますし、親子2世代やご夫婦で関わらせてもらうこともあります。人の人生に寄り添わせてもらって、本当にありがたいことですし、楽しく仕事をさせてもらっています。

地域に根付いたステーションというところでは、病院主体の健康講座や地域活動に参加させてもらっています。最先端のことはできませんが、昔からある安心感はあるのではないでしょうか。

「何かあったら白十字の訪問看護ステーションに頼めばいい」と思ってもらえていると感じていますし、これからも周囲に求められることに対応していきたいと思っています。

訪問看護で大切なのは『相手と向き合うこと』

私自身のことで言えば、訪問看護では排泄に困っている方が多いので、そこのケアを大切にしています。排泄がうまくいくと、身体の調子が整ってくるんです。身体の基本の部分をしっかり支えることを心がけています。

これから訪問看護に進む方に対しては「看護技術の高さ」や「経験の豊富さ」は後々ついてくることでもあるので、やっぱり相手に向き合って話を聞けることや生活を見ることができること、相手に合わせることができることが大事だと思いますね。

大きな病院で経験してきたことを活かしながら働くことはできますが、たとえその経験がなくても、訪問看護で働きながらでもどんどん技術は身につけられるんです。本当に相手に寄り添えるかというところが重要かなと思います。

新型コロナウイルス感染症や地震など、世間でいろんなことが起きたときに、私たちも無理したらいけないということはよくわかったので、不安を抱えたまま訪問に行くことはしないし、利用者さんにもそのあたりを理解してもらえるように伝えています。

利用者さんの訪問目的を整理してみたら、命に関わる訪問はそんなに多くはないんです。この日に絶対行かなきゃいけないという訪問は少ないので、災害のときや感染症が蔓延したときは絶対無理はせずお休みさせてもらうこともきちんと最初に説明して、お互いに無理はしないようにしていますね。

東京白十字病院に併設されている「東京白十字訪問看護ステーション」

今後の目標-今の環境を守り続けること

令和7年4月から当ステーションの管理者になる予定です。30年間勤めてきたので、「やるしかない」という気持ちですね。10年後はどうなっているか分かりませんが、身体が丈夫なので仕事ができることがありがたいです。

法人として大切にしていることは、私が入職する以前から受け継がれ、今も変わることなく続いています。私もそれを引き継いでいければと思っています。

当ステーションは母体が病院で、介護老人保健施設や居宅介護支援事業所、地域包括支援センター、訪問介護など事業所が揃っているので、利用者さんの6~7割は院内からの依頼が多いですね。

各部署とのつながりを大事にしながら、スムーズに連携できたらと思っています。周辺の訪問診療機関も限られているので、連携をとる医師もある程度決まっていて、その先生たちと関係ができていると連携がしっかりとれるのでありがたいです。そういう意味では、今までの白十字会の歴史があってこそ、今地域に根付いた存在でいられるんでしょうね。

管理者になると事務的な仕事は増えると思いますが、スケジュール調整や新規依頼の受付などは現在でもやっているので、仕事としてはあまり変わらないと思っています。訪問看護ステーションの管理者には営業の役割があると思いますが、当ステーションは母体が安定していて、利用者さんの介入依頼はケアマネジャーや病院などから相談にきてもらえるので、営業が必要ないのも強みのひとつですね。

これから管理者になりますが、このまま変わらず、この雰囲気のステーションであり続けたいと思っています。訪問看護に関する制度的な変化や外部の環境の変化はあると思いますが、私自身大事なものは変わらないですし、周囲の変化に対応しながら進んでいけたらと思っています。

安心して戻れる環境づくり

教育体制もしっかりしていて、入職したらすべての利用者さんに3回程度は先輩看護師が同行します。3ヶ月目くらいから少しずつ実践してもらって、本当に独り立ちするのは3~4ヶ月目くらいですね。訪問看護のスキルや知識を学ぶことに集中してもらっています。

スタッフの出入りはもちろんありますが、私が入職してから30年のあいだで、ステーションのメンバーは大きく変わることなく、安定して働き続けている人が多いです。比較的同じメンバーで続けてこられたので、精神的な面ではとても楽です。今いるメンバーはみんなそれぞれのところで経験を積んできて、訪問看護がやりたいといってきてくれた人たちで、その人たちがそのまま長くいてくれています。スタッフが定着しているからこそ、居心地がよく、訪問看護に集中できる環境が整っているんです。

あと、当ステーションでは訪問スケジュールは余裕を持たせて調整しています。1日の訪問件数は午前2件・午後2件ほどです。多くても1日に5件ですね。訪問件数によってインセンティブがつくステーションもありますが、1日に訪問5~6件が週5日続く状態は、長い目でみると難しいと思っています。もちろん、利用者さんの退院が続いて忙しい月もありますが、無理のないスケジュール調整を意識していますね。そのおかげか、メンバーみんながとても穏やかなんです。そこも職場の魅力だと思っています。

インタビュアーより

30年間白十字訪問看護ステーションに勤められ、ご利用者さんへの想いにあふれた渡邉様。訪問看護という仕事を楽しんでおられ、温かい笑顔が印象的でした。職場の雰囲気も和やかで、スタッフ同士のコミュニケーションも活発です。訪問看護師として楽しく働きたいと考えている方にぴったりなステーション様です!

事業所概要

社会福祉法人 白十字会 東京白十字訪問看護ステーション(東村山市諏訪町)

住所:東京都東村山市諏訪町2-26-1

運営方針・理念:

・利用者およびご家族が望まれる在宅療養が送れるよう支援いたします

・予防的なケアを重視し、自立した日常生活が送れるよう支援いたします

・介護されるご家族の健康および生活を大切にしたケアの提供に努めます

事業所紹介ページ:https://ns-pace-career.com/facilities/14456

SNSシェア

  • LINEアイコン
  • facebookアイコン
  • Xアイコン
記事投稿者プロフィール画像 NsPace Careerナビ 編集部

「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。

関連する記事

NsPaceCareerとは-PCイメージ画像左 NsPaceCareerとは-SPイメージ画像左

NsPaceCareerとは

訪問看護・在宅看護に特化した
求人情報検索・応募のほか、
現役の訪問看護師や在宅経験者への無料相談や、
事業所への事前見学申し込みが可能です。

NsPaceCareerとは-PCイメージ画像右 NsPaceCareerとは-SPイメージ画像左