精神科の訪問看護で働く際に必要な研修とは?研修の内容や研修が不要なケースも紹介

公開日:2024/03/21 更新日:2024/03/22
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精神科の訪問看護に携わりたいと考えているものの、働く前に何か研修を受講する必要があるのか、疑問を抱えている方もいるのではないでしょうか。

精神科の訪問看護師向けの研修には、経歴によって必須な場合と不要なケースがあります。

この記事では、精神科の訪問看護師として働くために必要な研修や、研修が不要なケース、自己研鑽におすすめの勉強法や研修について紹介します。

精神科の訪問看護師として働きたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

※記事の内容は2024年3月15日の調査に基づくものになります。

精神科の訪問看護で働く際には研修を受ける必要がある?

精神科の訪問看護では「精神科訪問看護基本療養費」の届出要件を満たすために、研修が必要なケースがあります。

しかし研修が不要なケースもあるため、それぞれの理由も含めて解説していきます。

事前に研修の受講が必要なケース

精神科の訪問看護を提供して、精神科訪問看護基本療養費を算定するには、下記の要件が満たされていなければなりません。

『精神疾患を有する者への看護について相当の経験を有する保健師、看護師、准看護師、又は作業療法士が指定訪問看護をする必要がある』

「相当の経験」とする部分の詳しい要件は後述しますが、精神疾患の患者さまへの臨床経験がない、もしくは少ない看護師では、条件を満たせずに算定できないため、すぐに精神科の訪問看護師として働けません。

そこで「相当の経験を有する」条件を満たすためにも、「精神科訪問看護基本療養費算定要件研修」という研修を受ける必要があります。

参照:厚生労働省近畿厚生局「令和3年度|訪問看護療養費の取扱いの理解のためにp31-32」

研修の受講が不要なケース

一方で、精神疾患の方への看護をある程度経験している看護師であれば、「精神科訪問看護基本療養費算定要件研修」の受講は不要です。

しかし病棟での関わりと訪問看護での関わりは異なる点も多いため、勤務先の訪問看護ステーション独自で設けている教育プログラムの受講や、在宅精神医療に関する勉強会やセミナーなどに参加し、自己研鑽を重ねていく必要はあるでしょう。

さらに自己研鑽を積むためにおすすめの勉強法や研修についても後述していきますので、最後までご覧ください。

参照:厚生労働省近畿厚生局「令和3年度|訪問看護療養費の取扱いの理解のためにp31-32」

精神科訪問看護基本療養費算定要件研修とは?

前述した、精神科訪問看護基本療養費算定要件を満たすための精神科訪問看護基本療養費算定要件研修とはどのような看護師に受講が求められているのか、どのような内容なのか、それぞれ分けて解説していきます。

自分は研修を受講対象なのか気になっている方は、確認しておきましょう。

精神科訪問看護基本療養費算定要件研修の受講が必要な看護師

精神科訪問看護基本療養費算定要件研修が必要な看護師は、下記を満たさない看護師です。

  • 精神科を標榜する保険医療機関において、精神病棟又は精神科外来に勤務した経験を1年以上有する者
  • 精神疾患を有する者に対する訪問看護の経験を1年以上有する者
  • 精神保健福祉センター又は保健所等における精神保健に関する業務の経験を1年以上有す
  • る者
  • 国、都道府県又は医療関係団体等が主催する精神科訪問看護に関する研修を修了している者

参照:厚生労働省近畿厚生局「令和3年度|訪問看護療養費の取扱いの理解のためにp31-32」

上記の3つは臨床経験となるため、訪問看護ステーションに勤務してから算定要件を満たせるものではありません。

しかし最後の「国、都道府県又は医療関係団体等が主催する精神科訪問看護に関する研修を修了している者」は、精神科臨床経験のないもしくは1年未満の看護師が、訪問看護ステーションへ入職後に算定要件を満たすための選択肢となります。

国、都道府県又は医療関係団体等が主催する精神科訪問看護に関する研修というのが、いわゆる「精神科訪問看護基本療養費算定要件研修」を指します。

精神科訪問看護基本療養費算定要件研修の内容

精神科訪問看護基本療養費算定要件研修とは、国や都道府県、医療団体によって開催される、精神科訪問看護に関する知識を取得するための、20時間以上で修了証が交付される研修を指します。

内容としては研修によって細かな違いはあるものの、主に下記の内容となっています。

  • 精神疾患を有する者に関するアセスメント
  • 病状悪化の早期発見・危機介入
  • 精神科薬物療法に関する援助
  • 医療継続の支援
  • 利用者との信頼関係構築、対人関係の援助
  • 日常生活の援助
  • 多職種との連携
  • GAF尺度による利用者の状態の評価方法

基本的な精神疾患や精神科薬物療法に関する知識から、看護師としてのアセスメントや介入方法、在宅で支援を継続するための信頼関係の構築方法など、具体的な内容も盛り込まれている研修となっているのが特徴です。

20時間以上の研修に加えてテストが実施されるため、個人差や職場によって差はあるものの、研修の受講からテストの実施まで1〜2週間程度かかると考えておきましょう。

参照:厚生労働省「訪問看護ステーションの基準に係る届出に関する手続きの取扱いについて」

精神科訪問看護基本療養費算定要件研修はどこで受けられる?

精神科訪問看護基本療養費算定要件研修はオンラインやオフラインで受けられる研修です。

例えば、公益財団法人日本訪問看護財団による「令和4年度改訂版 精神障がい者の在宅看護セミナー」も精神科訪問看護基本療養費の届出要件を満たす研修です。Webオンデマンド研修であり、受講からテストまで一貫してオンラインでの受講が可能です。

また全国訪問看護事業協会によるオンライン研修も定期的に開催されており、他にもさまざまな団体が受講の機会を設けています。

ただし、勤務するステーションによって研修団体を指定しているところもあるため、どこの研修を受講すると良いか、勤務先に確認すると良いでしょう。

参照:公益財団法人日本訪問看護財団「令和4年度改訂版 精神障がい者の在宅看護セミナー」

参照:一般社団法人全国訪問看護事業協会「令和6年度研修会一覧」

精神科訪問看護基本療養費算定要件研修の受講における注意点

精神科訪問看護基本療養費算定要件研修を受講するにあたって、気をつけておきたい注意点を3つ解説していきます。

主な注意点は下記の3つです。

①受講には事前申し込みが必要

②受講料がかかる

③研修修了後に届出が必要

それぞれ解説していきます。

①受講には事前申し込みが必要

研修を受講するには、事前の申し込みが必要です。もし事前の申し込みに間に合わなければ、次の研修開催のタイミングまで待たなければなりません。

さらに、受講の申し込み期限については開講日の1ヶ月前としている団体が多いですが、申し込み可能期間が2週間程度と、申し込める期間が短いものもあります。

受講予定の研修の情報は、必ず事前にチェックしておきましょう。

②受講料がかかる

精神科訪問看護基本療養費算定要件研修の受講には受講料がかかります。

おおよその相場は15,000〜30,000円程度ですが、団体の会員か非会員かによって費用は変わってきます。

しかし、他の入職者とまとめて申請をすることで法人会員として割引できるケースや、個人で支払ってから入職後に経費として請求できるケースもあるため、受講料については事前に勤務先に確認しておくようにしましょう。

③研修修了後に届出が必要

精神科訪問看護基本療養費算定要件研修を受講してテストを終えたら、すぐに精神科の訪問看護に行けるわけではありません。研修修了後に地方厚生局へ届出を出す必要があります。

算定要件を満たす看護師であることを、所定の用紙に記載して提出しましょう。

この提出ついては訪問看護ステーションで対応してくれるところが多いですが、念の為に確認しておくと良いでしょう。

届出後、精神科の訪問看護に行くことができるようになります。

参照:厚生労働省近畿地方厚生局「精神科訪問看護基本療養費に係る届出書(届出・変更・取消し)

精神科の訪問看護で働く上でおすすめの勉強方法

これまで精神科の病院などで臨床経験を積んできた看護師であっても、やはり環境の異なる在宅での看護の提供において、自己研鑽を積む必要があります。

ここからは精神科の訪問看護師として働く上で、研修の受講も含めたおすすめの勉強方法を紹介していきます。

研修の受講

精神科の訪問看護の質を高めるためにも、さまざまな団体が精神科訪問看護に関する研修を実施しています。

例えば全国訪問看護事業協会による令和6年度の研修では、精神科訪問看護基本療養費算定要件となる研修会以外でも、新任管理者向けの「訪問看護新任管理者研修会」や「看護職のGAF評価と実際」、「訪問看護ターミナルケア集中講座」など、在宅において看護師が悩みやすいGAF評価やターミナルケアの研修も実施されており、精神科訪問看護師にとって非常に良い学びとなるでしょう。

他にも、一般社団法人日本精神科看護協会より精神科に関するさまざまな研修などが行われています。

参加において費用はかかるものの、新たな知識を手に入れ、精神科医療の動向を理解でき、研修参加にはさまざまなメリットがあります。

なかなか独学では勉強が進まないという看護師にとっても、おすすめの学習方法と言えるでしょう。

参照:一般社団法人全国訪問看護事業協会「令和6年度研修会一覧」

参照:日精看「教育|研修会」

書籍の購入

精神科看護や在宅看護など、精神科訪問看護に活用できる書籍も多く販売されています。

書籍は持ち歩けるため、カフェや公園で読んだり、通勤時間など好きなタイミングで読んだりできて便利です。

精神科看護に注目した本や、薬物療法について詳しく解説された本、また症例について気になる方は、研究発表や学会発表の資料を探してみるのも良いでしょう。

ノートに書きおこしてみたり、マーカーを引いてみたり、自分なりに頭に入る方法で学習していきましょう。

臨床経験について振り返る

自分自身が精神科訪問看護を実践していく中で、困った場面や悩んだ場面などがあれば、プロセスレコードに起こして振り返ってみるのも一つの勉強方法です。

実際に精神疾患の方と関わった経験は、何よりの重要な学習の機会となります。

自分自身で書き起こしたプロセスレコードを用いて、訪問看護ステーション全体で看護について振り返ってみると、新たな意見が聞けて学びになる場合もあります。

恥ずかしがらずに、過去の経験やプロセスレコードを他のスタッフにも共有して一緒に振り返り、意見をもらってみるのも大きな学びになるでしょう。

精神科の訪問看護で働くためには研修の受講が必要な場合がある!働いてからも自己研鑽を忘れずに

本記事では、精神科の訪問看護で働く際に必要な精神科訪問看護基本療養費算定要件研修とはどのようなものか、研修が不要なケースとはどういった看護師なのか、また精神科の訪問看護師として自己研鑽していくためにおすすめの勉強法や研修にも触れて解説してきました。

精神科の訪問看護師として働く上で、臨床経験が1年未満の看護師の場合は研修の受講は必須です。

臨床経験のある看護師であっても、在宅での精神科看護ならではの視点を必要とされるため、日々の自己研鑽を続けて、精神科の利用者さまへ質の高い看護を提供していきましょう。

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記事投稿者プロフィール画像 NsPace Careerナビ 編集部

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