利用者をチームで支える~「相手の立場に立つ」ことを大切に~ 三鷹中央リハケア訪問看護ステーション 黒木さんにインタビュー

訪問看護認定看護師でもある黒木様。在宅医療に27年、訪問看護に23年、現在のステーションの管理者として20年の経験をお持ちです。黒木様の訪問看護への想い、そして今後のビジョンをうかがいました。
整形外科病棟を経て訪問看護の道へ
都内総合病院の整形外科病棟で8年間勤務しました。脊椎専門の病棟で、寝たきりの患者さんとの関わりが多かったです。そのなかで患者さんの退院した後の生活が気になり、在宅医療に興味を持ちました。
その後、診療所に転職し、訪問看護やデイケア、往診などの在宅医療に関わるようになりました。さまざまな経験をさせてもらい、勉強になりましたが、重荷になる部分もありました。紆余曲折を経て、2005年に当ステーションの立ち上げに管理者として関わることになったんです。立ち上げのときは苦労しましたよ。法人のノルマがあったので、地道に営業活動を続けていました。
本当に大変でしたが、営業の大切さを学び、その経験が今では糧になっています。そこからコツコツと信頼を積み重ね、利用者さんの数を増やしていきました。累計すると1000人ほどになります。

「相手の立場に立つ」ことが全ての基本
当ステーションの理念は「相手の立場に立つ」ことです。利用者さんはもちろん、ご家族の状況や気持ちに寄り添い、必要なフォローをきめ細やかにおこなうことを常に心がけています。
この理念は、私自身の経験も原点になっています。私の母も8年間、脳出血の後遺症で寝たきりの状態が続いており、気管切開や胃ろうといった医療的ケアが必要です。
介護者としての実体験を通して、利用者さんやご家族が、日々どのように過ごされているのか、何に不安を感じているのかを、より深く理解できるようになったと感じています。自分が看護師としてどうあるべきかをよく考えるようになりました。
利用者さんやご家族と関わるときには「近所の方がちょっと様子を見に来た」くらいの親しみやすい雰囲気を大切にしています。訪問看護師としてうかがうと、どうしても「医療従事者」という立場になり利用者さんやご家族が遠慮されたり、緊張されたりすることがあります。私たちはお客様ではなく生活を支える一員でありたいのです。
だからこそ、医療者と利用者さんという垣根を超えた、温かく安心できる関係性を築くことを重視しています。そして、スタッフにも常に「相手の立場に立って考え、行動すること」の大切さを伝えています。
また、在宅での療養生活をより良いものにするための工夫も、チーム全体で共有しています。たとえば、緊急時やトラブル時に、ご家族が少しでも落ち着いて対応できるよう、具体的な対処方法を一緒に練習していますよ。また、ヘルパーさんたちがより効果的なケアを提供できるよう、利用者さんの状態や特性に合わせた情報共有や連携も密におこなっています。
在宅療養においては、室温や湿度の管理も非常に重要となるため、その理由や具体的な方法についても、ご家族やヘルパーの方々にお伝えし、生活環境全体を整える視点も大切にしています。

スタッフ一人ひとりを尊重し、成長をサポートしたい
当ステーションでは、経験の浅いスタッフもスムーズに業務に慣れ、着実に成長できるように、段階的な教育体制を整えています。入職後1ヶ月間は、先輩看護師による同行訪問をおこない、実際の現場で必要な知識や技術を丁寧に指導します。
個々のペースに合わせて、知識や技術の習得度を確認しながら進めていますよ。私自身も、入職から1ヶ月〜半年を目安に個別面談をおこない、業務の進捗状況や不安な点などを共有し、安心して業務に取り組めるようサポートしています。
新人スタッフとの面談では、常に「あなたの看護スタイルとは?」と問いかけ、主体的な学びを促しています。それぞれの個性や強みを活かしながら、看護師として成長していくことをサポートしたいと考えているからです。
訪問看護において不安を感じやすいオンコール対応も、経験の浅いスタッフが安心して対応できるように、困ったら私に相談できる体制にしています。緊急時や判断に迷うときには、いつでも相談できる体制があることで、経験の少ないスタッフも積極的に看取りなどの貴重な経験を積むことができています。
このような丁寧な教育体制が、スタッフの安心感と定着につながっていると感じています。現在在籍しているスタッフのうち、3名が勤続10年以上なんですよ。

利用者のニーズに合わせ、チームで支える
当ステーションでは、利用者さん一人ひとりに合わせた柔軟な対応を心がけています。たとえば、在宅サービスに対して受け入れ困難な利用者さんのケースでは、週1回ではなく隔週から月1回を提案することもありますよ。
「利用者さんに受け入れてもらえるにはどうしたらいいか」を考えていますね。利用者さんの性格や状態に合わせたアプローチを取ることで、より良い関係性を構築できるように心がけています。
また、看護師それぞれの専門性や得意分野を活かしたチーム医療を実践しています。具体的には、褥瘡などの皮膚トラブルをしっかり診れる看護師がいますし、母体の病院には皮膚科があります。
専門的なところと連携して、利用者さんに的確なケアが提供できることも強みです。精神面のケアが得意なスタッフもいるので、精神疾患を抱えた利用者さんを受け入れる体制も整ってきています。専門的な知識やスキルをもつ頼もしいスタッフで、さまざまなニーズに対応できる体制を整えています。
地域の多職種との連携も強化
当ステーションでは、利用者さんへより質の高い看護を提供するため、地域の多職種との連携も大切にしています。三鷹市のヘルパー事業所や、ケアマネジャーのグループを訪問し、事業所が抱える課題や連携体制の強化などについて情報交換をしています。
ケアマネジャーの方々には、在宅で過ごす利用者さんとご家族へ、ケアプランの内容やコミュニケーションの取り方などをお話しました。今後も情報交換や合同研修などを通して、顔の見える関係性を作り、地域全体で利用者さんとご家族を支える体制の構築を目指していきたいです。
日々の業務のなかで、利用者さんの笑顔や感謝などの言葉をいただけることが何よりも励みです。利用者さん、ご家族、ヘルパーさんなど…たくさんの方々から、自分がやってきたことが評価として返ってきたとき、本当にやりがいを感じますね。
インタビュアーより
黒木さんの温かなリーダーシップの下、「相手の立場に立つ」という理念が隅々まで浸透した三鷹中央リハケア訪問看護ステーション様。自身の家族の介護経験も活かしながら、利用者さんとその家族に寄り添った看護を実践し、それをスタッフにも伝えていく姿勢は、訪問看護の本質を体現しています。経験の浅いスタッフも安心して働き、成長できる環境づくりと、スタッフ一人ひとりの専門性を活かしたチーム医療の実践は、これからの訪問看護を考える上で大きなヒントになるのではないでしょうか。
事業所概要
医療法人社団永寿会 三鷹中央リハケア訪問看護ステーション
運営方針・理念
訪問看護サービスを利用者がその有する能力に応じて可能な限り自立した日常生活を営むことができるよう、利用者の療養生活を支援し、心身の機能の維持回復を目指すことを目的としてサービスを提供しています。

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