「自宅で過ごしたい」を叶えるために~ヘルパーとの連携で健康と生活を支える ウォームハート訪問看護ステーション~管理者櫻井さんとスタッフ吉川さんにインタビュー

ウォームハート訪問看護ステーションは「幸せを広げる」を理念にかかげ、スタッフ一丸となって利用者や地域に寄り添う看護を提供しています。ウォームハート訪問看護ステーションに就職したきっかけや訪問看護への想いを管理者の櫻井さんとスタッフの吉川さんに伺いました。
看護師には戻らないと思っていた。管理者櫻井さんが訪問看護の道へ進んだきっかけ
看護師資格を取った後、大学病院の小児科病棟に3年間勤めました。そこで子どもが病気で亡くなっていく姿を見て、自分の無力さにつらくなり、辞めてしまったんです。
でも、退職後に結婚し、日々を過ごすなかで「また看護師の仕事をしたい」と思うようになりました。辞めたときには「看護師には二度と戻らない」と思っていたんですが、現場に戻りたくなって、出産後、非常勤で病院に勤めることにしました。そのタイミングでその病院の訪問看護ステーションの所長さんに訪問看護に誘われたんです。
当時、私は20台後半でしたが、その時代にはその若さで訪問看護に進む人があまりいなかったので、上司からは反対されましたね。それでも「やってみたい」という想いが強かったので、訪問看護の世界に進むことにしました。
訪問看護の仕事を始めた当初、子育て中だったこともあり、オンコール対応が難しく、一度は看護師の仕事から離れました。しかし、その後、父が在宅で亡くなった経験を通して、やはり訪問看護の道に戻りたいと強く思うようになりました。
訪問看護に戻るまでの間にも、さまざまな変化があり、急性期病院の退院支援部門にも勤めました。退院支援部門では、訪問看護に患者さんを繋ぐ立場として、『その人が望む暮らしに何とか戻せないか』という気持ちを強く持ちながら、懸命に取り組みました。
「『もうこれ以上、私にできることはないかもしれない』と感じるほど、燃え尽きたような感覚になりました。その経験を通して、病院以外の場所で、お看取りができる環境を作りたいと強く思うようになったんです。
ホームホスピスのような施設を作りたいと思っていたのですが、実現は簡単ではなくて。どうしようかと思っていたところにウォームハートの社長に声をかけてもらい、今に至ります。
これまで何度か看護師の仕事から離れたことはありますが、やっぱり看護に戻ってきてしまうんですよね。私自身も病気になった経験があり、父が亡くなったことも、家で看取ったことも自分の力になっていますし、これまでの経験が積み重なって、今の私がいると思っています。
若い頃は、利用者さんとのコミュニケーションに緊張することがあったのですが、年齢を重ねて経験を積み、すごくフラットに利用者さんやご家族とお話できるようになりました。
あと、急性期の退院支援の経験から「今後はこういうことが起こるかも」「ゆくゆくはこんなことで困るかもしれない」など未来予想図が割とできるようになったことは私の強みだと思っています。たとえばがんの方が治療しても治らないところを見てきているので、先々に困る可能性があることを考えて、サポートの内容や使える社会資源を考えたりできます。

生活を支えるヘルパーの存在。利用者の身体と生活をサポート
当ステーションの強みは、訪問看護や在宅医療について全く経験がない方でも、安心して入職できる環境が整っていることです。現在のスタッフも、必ずしも訪問看護の経験が豊富というわけではありません。経験が少なくても活躍できる理由は、ヘルパーさんとの連携がしっかりとしているからです。私たちはチーム全体でサポートし合いながら、訪問看護を提供しています
自宅での生活に寄り添うのは、看護師はやっぱり少し苦手なんですよね。食事をどうするか、片付けをどうするかとか、排泄に関してはどういうおむつの当て方をしたら朝まで快適に過ごせるかとか…本当に細かいところに気がついてサポートしてくれるヘルパーさんたちなので、私たちは利用者さんの病気や健康のこと、医師との連携に安心して集中できます。
以前は、たとえば利用者さんの支援をしていても「これはどうなってるんだろう」とわからないことがあっても、多職種との連携がうまくいっていなかったので、利用者さんの状態が「点」でしかわからなかったんですよね。
ですが、今は私たちが訪問しない間の利用者さんの様子をヘルパーさんたちが見てくれているので、生活背景や課題もサポートしてくれて。困ったらそれを持ち帰り、ミーティングでみんなで共有します。当ステーションの強みは、ヘルパーさんと一緒にやるというところですね。
多職種連携の方法では、今ではICTツールがありますが、そこに発信することに時間とパワーがいるんです。業務の合間にしないといけないし、コミュニケーションの難しさもあると思います。
だけど当事業所では、私たちが困っていると「じゃあこうしましょう」とヘルパーさんが提案してくれて、すぐ行動にうつしてくれるのです。すごく心強いですね。
業務を効率化して、スタッフの負担を軽減するために、新しいシステムも導入しているんですよ。だけど、情報共有についてはしっかりと考えています。ウォームハートは地域において老舗みたいな存在ですが、世の中の役に立つためには変えなければいけないところは、変化を積極的に取り入れるところなんですよ。

一人ひとりとじっくり向き合いたい。スタッフ吉川さんが訪問看護を選んだ理由
私は看護大学を卒業してから、まず大学病院に就職しました。そこで循環器内科や呼吸器内科、外科の混合病棟に3年勤めました。新人の頃は患者さんを同時に何人も受け持つことに慣れるまで時間がかかってしまって、業務についていくのに必死でした。でも、そのなかで急性期も慢性期も経験して、やりがいも感じていました。元気になって退院していく患者さんを見るのがすごく好きでしたね。
私は、複数のタスクを同時にこなすことはあまり得意ではなかったのですが、ひとりの患者さんと向き合い、お話を聞くことは好きでした。患者さんの気持ちに寄り添い、その思いを丁寧に受け止めることにやりがいを感じていたんです。
でも、病棟ではひとりの患者さんとじっくり向き合うというのが難しくて、タスクをこなしていくみたいな感覚になってしまうところがありました。お看取りも在宅のような穏やかなものではなくて、患者さんの身体にさまざまな機器がつながっていることがあります。自分のなかでは患者さんを見ているという感覚よりも機器の数値に意識が向いている部分もあって……そのような環境でずっと働き続けるのが想像できませんでした。
病棟の先輩方が3年目の節目で転職する方が多くて、自分のなかでも3年目が一つの区切りと考えていました。実際に3年目を迎えるにあたって今後のことを考えたとき、これからも病棟で働いていく未来が自分のなかでは見えなかったんです。
そこから転職活動をしましたが、最初は訪問看護に転職することはあまり頭にはありませんでしたね。訪問看護は経験年数が必要とか、ベテラン看護師さんがいくものと思い込んでいたので。
でも、転職アドバイザーの方に相談したときに、私の性格や考え方であれば在宅の方に向いているのではないかと言っていただいたんです。そのとき、病棟で働いているときにも「将来は訪問看護師が向いているかもね」と先輩から言われていたことを思い出しました。
それから訪問看護も転職先のひとつとして考えるようになり、今は若い人でも在宅の場で活躍している人もいるということを聞いて、訪問看護に転職を決めました。
ウォームハートとの出会い 「幸せを広げる」理念に共感
転職活動をしていたときは、まだ看護師3年目だったので、即戦力を求められる訪問看護ステーションはやめようと思っていて。ある程度新人でも受け入れてもらえるような場所で、穏やかな雰囲気のところがいいなと漠然と考えていました。
さまざまなステーションに見学に行きましたが、当ステーションを選んだ理由のひとつは理念です。「幸せを広げる」ということを掲げていて、実際に見学したときにも社長が「利用者だけでなく社員や地域にも幸せを広げたい」と熱意をもって話してくれました。
それがすごく印象に残って、こういうところで働きたいと思って決めました。入職してもうすぐ5年目になりますね。

看護師としての経験が浅くても活躍できる環境
入職したとき、3年間病棟での経験があるからある程度はできるだろうと思っていました。だけど、病棟と在宅では看護師としてやることは同じであっても、在宅では考えないといけないことがたくさんあるんです。利用者さんの先を見据えてのアセスメントが必要なんですよね。
ある程度の経験はあっても、自分には何もできないことを痛感して自信をなくしたこともありますが、当ステーションにはヘルパーさんがいるので、全然ひとりではないんですよ。たとえば週1回しか看護師が訪問しない利用者さんでも、ヘルパーさんは毎日とか1日に何度も訪問してくれていて、情報をたくさん持っているんですね。ヘルパーさんが入っている安心感は大きいです。
あとは、看護師の年代は幅広いですが、わからないことはミーティングで相談できる環境があります。病棟ではすぐそばに先輩や医師がいたのでタイムリーに相談できるんですが、在宅は自分ひとりで訪問して、基本的には自分で判断して、緊急性があるかないかを考えないといけないので、そこが1番不安ではありました。
だけど、事務所に戻れば相談できるし、ヘルパーさんも情報を持っているから、その都度相談して勉強しながら学べる環境なんです。その環境のおかげで、4年目を迎えて自分の成長を感じているので、これから私と同じ年代の方が入職したら、やる気があればちゃんと学べる環境ではあるから大歓迎ですという気持ちですね。
次のステップに進むために
この先もずっと訪問看護をしていくうえでの課題は、新規依頼の対応です。
たとえば、新規の方の依頼がきたときは、情報がまだ少ないなかで、一から自宅の環境やサービスを整えたり、今後の療養計画を考えたりしなければなりません。
これまでは先輩方が介入して、後から自分が入っていくことが多かったのですが、最近では自分も初回で入ることも増えてきて、わからないことや考えが不足していることがよくわかりました。新規依頼の対応ができるようになるのが次のステップだと考えています。
「自宅で過ごしたい」を叶えるために。今後の展望
櫻井様:
当ステーションは今年で5年目に入り、現在は「定期巡回随時対応型」のステーションということもあり、看取りの依頼が多い傾向にあります。
そのため、利用者さんへの介入開始から2日や2週間など短い期間で亡くなることも少なくありません。急ぎの依頼はすぐに動けるように調整をしています。
ただ、エリアがどうしても決まっているので、そこは社長と相談しながら進めています。
将来的には看護小規模多機能を目指しています。現在の訪問看護の定期巡回で利用者さんを支えられることもたくさんあるのですが、どうしてもお家では難しい方もいますし、病院で亡くなる方のなかには「家に帰りたい」と言って亡くなる方もいます。
そんなとき看護小規模多機能であれば、その希望を叶えることが出来るのではないかと思っています。最期までおうちで過ごしたいけれど、どうしても難しい方が、少しでもお家に近い雰囲気の場所で過ごせたらと考えています。
私たちはたまたま看護師という資格を持っているだけで、利用者さんが安心して生活していくこと、自分の希望を叶えられるようにすること、お家の中で過ごせるようにしていくことが目標なので、そのための手段はなんだっていいんです。
スタッフの教育というくくりでとくに取り組んでいることはありません。それぞれの個性があるので、自分で足りないところややりたいことを見つけて自分で学んでほしいと思っています。
けれども会社として、ヘルパーさんや外部の人たちもみんなでチームだから、全員を大事にしながら、個人が幸せになって、地域が幸せになって、豊かになることを目標にしています。
インタビュアーより
看護師としての経験年数が浅い時期に訪問看護の世界に入られた櫻井様と吉川様。そのなかでも経験を積み、利用者さまの生活に寄り添う看護を提供されています。スタッフ同士の絆が強く、温かくて素敵なステーション様です!
事業所概要
ウォームハート訪問看護ステーション(東京都杉並区)
住所:東京都杉並区上井草3-17-24
運営方針・理念:
幸せを広げる。自分に、仲間に、この地域に。

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