利用者にもスタッフにも安心を~地域に根差したステーションになるための働く環境づくり いすみ訪問看護ステーション 吉原さんにインタビュ~
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利用者にもスタッフにも安心を~地域に根差したステーションになるための働く環境づくり いすみ訪問看護ステーション 吉原さんにインタビュ~
看護学校卒業後、病院に入職した吉原さん。病院併設の訪問看護の設立をきっかけに訪問看護ステーションに配属され、当初から管理者として活躍されています。病院併設の訪問看護ならではの強みや、職場の環境づくりで大切にされていることを伺いました。
看護師のキャリアは病院から―訪問看護との出会いと管理者としての歩み
看護学校を卒業後、1996年にいすみ医療センターに入職しました。入職してからは外来、病棟、オペ室などいろいろな部署で経験を積ませてもらいました。そんなときにご縁をいただいて訪問看護の部署に配置されたんです。
当初は『訪問看護室』という形で運営していたんですが、2017年に同じ市にある訪問看護ステーションと合併して 『いすみ訪問看護ステーション』という形になりました。合併してから私が管理者を務めることになり、現在8年目になります。
訪問看護に携わるまでは、どちらかというと外科の看護が好きだったんです。在宅の分野は「いずれやってみたい」という想いはありました。ただ、自分の意思ではなく異動という形でスタートした訪問看護のキャリアが、気が付くとこんなに長くなっていたことには正直驚いています。
訪問看護に異動した当時は、まだ退院支援が充実していない時代だったこともあり、悩んだり葛藤したりしたことがあったんです。
たとえば、外科病棟の患者さんは病気が良くなれば退院になりますが、その患者さんを訪問看護で引き受ける側になってみると「もう少し在宅での準備が整ってから帰してあげられなかったのかな」と思うことがありました。そんなこともあって、訪問看護で得た経験や知識を、また病棟に戻って在宅との連携について広められたらいいなと思った時期もあります。
今はこのまま訪問看護を続けていきたいと思っていますよ。訪問看護に異動した当初の経験をもとに、退院支援会議や地域連携室のミーティングで、在宅側の考えとして患者さんの状況や在宅でのサポートについて伝えるようにしています。
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「独立時の葛藤」と「病院併設だからこその強み」
当ステーションは病院の訪問看護と外部のステーションが合併して設立されたのですが、訪問看護室から訪問看護ステーションとして独立したときには、病院の内部と外部それぞれ連携の部分で苦労しました。
たとえば、合併前は訪問診療や居宅介護支援事業所も同じ訪問看護室という組織にあったので、病院から私たちに連絡を入れたら、私たち組織のなかで情報共有できるため、病院側としてはそれで用事が解決していたんです。
本来なら病院の退院調整の看護師や病棟の看護師などそれぞれが調整をおこなうのですが、その大変さが今までなくて、訪問看護室に電話一本で済んでいたので、私たち訪問看護が独立して役割が分担されたことを理解してもらうのが大変でした。
病院の外部との連携では、これまで外部の医師や事業所との関わりが少なかったぶん、初めてのことで大変でした。合併先の所長さんやスタッフの皆さんに教わりながら、これまでご縁のなかった方との関わりや自分がすべき役割、院内への周知など……葛藤しながらでしたが、スタッフのみんなの支えがあって乗り切ることができました。
現在も患者さんの紹介は病院からが多いですが、外部の方からの紹介も増えてきています。この地域には訪問看護ステーション自体がそもそも少ないので、みんなで手を取り合って進めています。
当ステーションで関わっていた方が当院に入院されたときには、カルテが共有化されているので、院内の共有がしやすいのはメリットです。利用者さんの普段の生活を病棟や外来に伝えることもできることは強みのひとつですね。
病院併設のステーションなので、受け入れた利用者さんが入院となれば、対応可能な範囲で病院に相談できるというつながりがあります。地域の先生方や多職種の方もある意味そういう安心感があるため利用者さんを任せてくれる理由のひとつになっているのかなと感じています。
訪問看護だからこそ感じるやりがい
病棟で働いていたときを振り返ると、患者さんの病気や治療しか見ることができていないことがあったと思います。退院後の生活について、たとえば誰がご飯を作るのか、薬を飲ませてあげるのか、ご家族のサポートは得られるのか……生活背景に配慮することまで考えられていませんでした。その経験もあり、当ステーションに入職してくれたスタッフには、同行訪問のときに利用者さんとのやりとりや観察するポイントを伝えています。
タイミングが良ければ、患者さんの入院時から退院後の生活まで経過を見てもらえるようにスケジュールを調整したこともあります。訪問看護に初めて関わるスタッフにとっては、患者さんの病院と自宅での表情の変化を見ることができてよかったと思います。
昔と違って、今は入院した時点から退院の準備を始める傾向がありますよね。入院中から訪問看護に声をかけてもらって、各部署と連携しながら退院支援を一緒に進めていけたらと思っています。
訪問看護では「10人いれば10人の生活や生き様がある」ということをすごく感じています。私たちは利用者さんの生きてこられた家庭のなかにお邪魔する形で関わらせてもらいますが、気持ちよく受け入れてくれる方も、そうでない方もいます。本当に人それぞれです。家族ではないけれども、より家族に近いひとりとして、一緒に支援させていただくというのは在宅ならではだと思っています。
家族ではないので何かあったときに最終的な決定はできないけれども、相談相手として常にそばにいてサポートできたらいいですね。「訪問看護に入ってもらっていてよかった」と言っていただいたり、余命が短いと言われていた方が退院して、告げられていた時期より頑張れた姿をそばで見ていると胸が熱くなります。訪問看護のやりがいを感じるときですね。
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スタッフが安心して働ける職場に―成長できる環境も強みのひとつ
職場の雰囲気はとても良くて、1日1回は大笑いするような部署です。入職してくれた方も途中で嫌になってやめることは今のところないですし、環境的には居心地よくできているのかなと勝手に思っています。スタッフ同士で意見や想いを伝えやすい環境になっていると思います。
訪問からステーションに戻ってきたときに、利用者さんとの関わりを振り返ったり、他愛のない話をしたり……コロナ禍でも自宅から直行直帰ではなかったので、必ず朝昼晩と顔を合わせて会話できる環境だったのも良かったのかもしれません。私自身、自分がみんなのモチベーションを上げる役割があると思っているので、コミュニケーションは大事にしています。スタッフのうち1人でも負のオーラで働いているとみんなに影響してしまうので、そのときには個人や数人でおしゃべりできる時間をとったりしていますね。
訪問から戻ったときに、ステーションが安心できる場所でありたいと思っています。スタッフの年代は上から下まで20~30歳ほど離れているのですが、みんなで声をかけ合いながら前向きに働けていると思います。
入職してきた方に職場のことについて伝えるときには、まずメリットをお話しています。私たちは病院が母体で組合の扱いなので、公務員になることや福利厚生がしっかりしていることは強みですね。
また、病院職員としての配置なので、病院が主体の教育も受けられるし、委員会や組織に入って活動できます。単独の訪問看護ステーションでは、キャリアを考えたときに主任や管理者など選択肢が狭くなってしまいますが、当ステーションは所属が病院とステーションと半々のような形になっているので、成長できる組織や役割があるのは魅力だと考えています。
たとえばリスク管理委員や記録委員、認知症ケアチームなどがありますが、ステーション内だけでなく、院内の情報を得られるので、世間の情勢を知りながら活動できると思います。
スタッフの気持ちを大切に―管理者として意識していること
利用者さんのなかにはご意見の多い方や対応が難しい方もいますが、スタッフで情報共有しつつ対応することを徹底しています。管理者として大事にしているのは、スタッフが自分に相談をしてくれたときに、自分の経験を振り返りながらアドバイスすることです。若いスタッフたちからはとくに、利用者さんやご家族とのコミュニケーションについて相談を受けることがあります。
たとえば「〇〇さん(利用者さん)からこういう風に相談されたんですよ」と相談されたときに「じゃあ、こういう風に返事をしてみたらどうかな」と具体的にアドバイスできるように心がけていますね。
若い頃には高齢者の利用者さんやご家族の考え方や想いが、自分だけの視点ではなかなか見えてこない部分もあると思います。人生経験が増えてくると、相手の雰囲気が掴めるようになってくるんですよね。なので、私やベテランの看護師がそういう視点からアドバイスすることもあります。
今の若いスタッフが、今後私たちの跡を引き継いでいってくれるかもしれないと思うと、大事にしたいと思いますし、みんなの「看護が好き」という気持ちを大切にしたいですね。
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これからは安心感の土台作りを
今後目指すところは、まずステーションをしっかりと軌道に乗せることからだと思っています。周囲のステーションは認定看護師や特定看護師が充実できるように動き始めていますが、まずは各々のスタッフが基本の訪問看護の業務をできるようにしてからこそだと思うんです。
当ステーションには入職してまだ独り立ちできていないスタッフもいるので、サポートしながら単独訪問してもらえるようになることからですね。
これまでは利用者さんの受け入れの相談がきても受け入れられないこともあったので、まずは地域の方々に「いすみ訪問看護に相談すれば受け入れてもらえる」という安心感の土台作りをしていきたいと思っています。
インタビュアーより
自然体で利用者様と向き合っておられる吉原様。その姿勢は利用者様だけでなくご家族や一緒に働くスタッフにも安心感を与えてくれます。スタッフは長く働いている方も多く、みなさん楽しそうに働かれている姿が印象的でした。ステーションの所在地は景色がとても良く、季節を感じながら訪問できるエリアです。興味のある方はぜひお問合せください!
事業所概要
いすみ訪問看護ステーション(千葉県いすみ市)
住所:千葉県いすみ市苅谷1177
運営方針・理念
「病気や障害があっても、住み慣れた家で暮らしたい」「人生の最期を自宅で迎えたい」
-あなたの望みをお手伝いします。
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