良い患者にならない選択”に気付かされた在宅の本質
良い患者を演じてしまう患者心理や病院と在宅の正しい論じ方を気付かせてくれた、兄弟と同じ病気を患っていた60歳の男性との出会い
インタビューご協力者
野島 あけみ
副代表、看護師、看護学修士、経営学修士
在宅療養支援 楓の風グループ
スキルス性の胃がんを患っていた60歳の男性
大学病院を退院した後の退院カンファレンスで、野島さんは病院の医師や大勢の看護師から「どうか1週間でいいからこの人を受け持ってくださいませんか」と言われたそうです。「末期なのに病識が乏しく、わがままで大変な方で…」という病院側からの言伝でした。
しかしその男性を在宅で看ていた野島さんは、単にわがままなのではなく、自分なりの生き方や信念があり、やりたいことがたくさんある方だと気付きます。そして亡くなった後に判明したことでしたが、男性のご兄弟が一年前に同じ病気で他界していたんだそうです。
男性は病識が乏しいわけでは決してありませんでした。自分がこれからどうなるのか、しっかりわかっていたからこそ、いわゆる良い患者にならない選択をしていました。それが自分の確固たる生き方だったのです。
しっかりと管理をされ、治療を受ける病院では患者さんは居心地が悪くならないように“良い患者”という役割を演じてしまいがち。病院は暮らす場所ではないから仕方ないのかもしれません。
しかし在宅に移ったからといって、必ずしもその人らしい生き方、暮らし方が出来ているのかと野島さんは突き詰めて考えます。
利用者さんが“患者”という役割から抜け出せず、単に場所が病室から自宅へ変わっただけの在宅看護が行われていないか。本当に本人や家族の求める看護ができているのか。「病院」から「在宅」という延長線上のような論じ方ではなく、「全く違うもの」という認識をしていかなければいけないのではないか。
仕事が終わったら家に帰るのと同じように、人が死んでいくのも当たり前。だからこそ、最期まで堂々と自分の人生を生きて死んでほしいと願う野島さん。野島さんはその男性に出会ったことで、在宅の本質や病院との差異の捉え方を根本から考え直すことができたと言います。
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