「本人には告知しないで」余命3ヶ月の夫を支える奥さんの愛
ガンで余命3ヶ月と言われた70代後半の男性。奥さんの意向で本人への告知はせず、奥さんの懸命な自宅ケアで本人にとっても一番自然な笑顔がこぼれる環境に。お看取りの時に奥さんから言われた意外な感謝の言葉とは?
インタビューご協力者
足立 栄子
看護師
レディーバグ訪問看護ステーション武蔵小山 管理者
70代後半で、余命3ヶ月というガンを患っていた男性利用者さん。
奥さんも70代と決して若くはない年齢だったため、
自宅でのオムツ交換から褥瘡のケアまでとても大変だったのだそう。
それでも9ヶ月も生きることができたのは、
奥さんのそばで一緒に暮らせたことが大きかったのだ
と足立さんは述懐します。
今では当然になっている、本人への余命告知。
しかし、その奥さんは周囲に
「すぐに落ち込んでしまうから、この人には言わないで」
と伝え、本人への告知を拒んでいました。
本人の生き様や生きてきた人生を一番そばで見てきて
一番理解しているからこその「言わない」という選択。
先生や看護師側も、奥さんの意向に沿うことに。
本人の希望もあったものの、最終的には奥さんの判断でお家に帰るという選択を取りました。
「本人の希望を尊重してあげたい」
ということで、ご自身が頑張ることを決めたのです。
その男性にとって、お家が一番良い環境だということはすぐにわかりました。
ほとんどがポートで数口しか食べることはできなかったものの、
奥さんの足音やご飯を作る包丁の音、料理の匂いなど、
慣れ親しんだ感覚にとても安心している様子。
お家にいる時には一番自然な笑顔が出ていたそうです。
それでも70代の奥さんにとっては
「看護師さんが来ないと腰も足も痛いので無理だわ」
と言うほどなかなかのハードワーク。
それもそのはず、看護師だけはOKだったものの、
ヘルパーさんや訪問入浴を入れることがNGだったのだとか。
何度もアプローチをしても
「本人の希望だから。病院でできる治療がないのであれば私が頑張れば良いんです」
と、奥さんが本当に懸命にケアをしていました。
余命3ヶ月の状態で主治医の先生も「これは難しい」と言うほどでしたが、
最終的には9ヶ月も生きることができました。
先生も「ここまで来れるのは、もう本当に奥さまの愛です!」
なんて言っていたのだとか。
そんな奥さんの大変な頑張りもあって、最期はとても良いお看取りを迎えました。
奥さんも「やりきった」という清々しい表情。
最後には奥さんも支えてくれた足立さんに
「私の時も来てね」
と冗談交じりに伝えたのだとか。
「いえいえ、まだ早いですから」
と返しましたが、その言葉からは、奥さんの感謝を
ダイレクトに実感することができたという足立さん。
自宅で過ごせるということが本人にとっては生きる希望になること。
そしてケアをする家族にとっても大変だけどもやりきる喜びは確かにあることを、
間近に見ることができるのは、この仕事でしか体験できないことなのかもしれません。
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