「住み慣れた自宅で過ごしたい」を叶えるために~スタッフの強みを伸ばす取り組み 酒井さんにインタビュー~訪問看護ステーション コネクトひらかた
医療秘書から看護師へ転身し、現在は訪問看護の管理者を務める酒井さん。「スタッフには楽しく働いてほしい」という想いから、働く環境づくりに力を入れています。
働きやすい職場を目指す酒井さんに、これまでの経験や大切にしていることを伺いました。
はじまりは医療秘書から 看護師を志したきっかけ
元々は病院の医療秘書として働いていました。職場の医師から「看護師になったらどうか」と声をかけていただいて、看護学校もいろいろ探してもらったことがきっかけで、看護師の道を歩むことになりました。
医師から声をかけていただいたことが後押しにはなったのですが、子どもの頃の経験から看護師になりたいという気持ちは少しありました。
中学生のときに友人を亡くした経験があり、大人になってから「(友人の)お母さんはこんな気持ちだったのかな」と思い出すことがあったんです。その経験が看護師の志した原点になっているのかなとも思います。
働きながら看護学校で勉強し、5年かけて准看護師から看護師免許を取得しました。
訪問看護との出会い「顔なじみのスタッフが訪問する安心感」
看護師になってからは病院で働き、いろんな科を経験したり立ち上げに関わったりしました。
病棟経験としては急性期や療養病棟、地域包括ケア病棟の経験があり、そのなかで、療養病棟や回復リハビリ病棟の立ち上げや病院併設の訪問看護の立ち上げにも携わらせてもらいました。
訪問看護を立ち上げた後には、病棟と訪問看護を行き来させてもらっていましたね。
病院併設の訪問看護は”みなし”の訪問看護でした。退院される患者さんを自分の病院内の訪問看護につなぐ形になるので、患者さんにとって慣れたスタッフが訪問できるのがすごくいいなと思いました。そこが訪問看護を魅力的に思えた部分でもありますね。
病院では9年在籍していたのもあって管理者を務めていたので、なかなか退職できなかったんですけど、リージョンコネクトの代表や知り合いのリハビリスタッフの方から声をかけてもらっていて、2年ぐらいかけて転職の運びとなりました。
訪問看護の現場で感じた「多職種連携の難しさとやりがい」
病院併設の訪問看護だと、医療や看護の体制が整っていることもあり、事業所内で解決できることがたくさんありますが、リージョンコネクトは単体の訪問看護ステーションなので、病院の訪問看護と比べると、始めは多職種連携の難しさを感じました。
うちの事業所内には看護師やリハビリスタッフ、ケアマネジャーがいますが、医師やヘルパーなどは外部の機関なので最初は連携の取り方が全く分からず苦労しましたね。
ですが、利用者さんが自宅で困らないようにするためには多職種でのサポートが不可欠です。みなし訪問看護をしていたときに退院前の自宅調査には行きましたが、退院後の実際の生活ってわからないんです。なので、利用者さんのことをより知っている方々と情報共有してもらうことが欠かせません。
多職種の方々にこちらから積極的に声をかけさせてもらうと、いろんな情報が共有できて、利用者さんのことをより深く知れるし、多職種で協力し、利用者さんにより良いサポートを提供できました。
単体のステーションでは、利用者さんの体調不良があればまず医師に連絡をとることから始まり、時間がかかってしまう。だけど、利用者さんにとって良い結果になるように、多職種でしっかり連携をとって対応することが大切だと思っています。
大事にしているのは「利用者さんと同じ目線でいること」
リージョンコネクトに転職して、今は前任の管理者から引き継ぐ形で管理者を務めています。大変なこともありますがスタッフみんなのバックアップがあって、助けてもらいながらやっている感じですね。
ここのスタッフは利用者さん一人ひとりに本当に熱心に向き合っていて、素晴らしいんです。
うちは0歳から高齢者まで幅広くみさせていただいていますが、どの利用者さんに対しても、スタッフは利用者さんと同じ目線でいることを大切にしています。
誰が担当しても同じケアやリハビリテーションを提供できるように、スタッフの間でちゃんと情報共有して進めていっています。利用者さんからも好評なんですよ。
利用者さんの想いに寄り添い、短期目標から長期目標をたて、サポートしていますね。
たとえば「まず家でできることを増やす」という目標から、少しずつステップアップし「外に出てみよう」「買い物に行けるようになろう」と長期目標に向けてサポートしています。利用者さん目線に立った目標や計画を立てることも、看護とリハビリの間で共通認識していることのひとつです。
看護とリハビリテーション連携の軸は「自発的な情報共有とコミュニケーション」
訪問のスケジュールによりますが、スタッフは朝に出発すると、夕方まで顔を合わせるのが難しいことが多いんです。訪問件数も多いし、帰りもバラバラなので、実際コミュニケーションが取りにくいことはあります。
でも、お互いにこまめにコミュニケーションをとるように心がけていて、日常的にそういう風土が出来上がっています。
たとえばお昼休憩に顔を合わせたスタッフで訪問した利用者さんの様子や会話を共有したり、顔を合わせるのが難しいときには電話やLINEを使ったりしています。自発的に動けるスタッフが多いんです。
ほかにも、利用者さんのサポートで「看護/リハビリでできることはある?」とお互いに相談し合い、利用者さんにできることを看護とリハビリが一緒になって考えています。スタッフみんなで「利用者さんに貢献できるように」という想いで切磋琢磨しています。
さらに、看護師がリハビリスタッフに教えてもらうことがたくさんあります。たとえば、人工呼吸器や気管切開がある方など、重症度の高い利用者さんは「排痰ケア」が大切なのですが、効果的な排痰方法を理学療法士に教えてもらって、看護師でも排痰ケアや指導ができるようにしています。看護とリハビリ両方で利用者さんをサポートできることが、お互いに心強くもありますね。
週に1回、職員全員参加の勉強会も実施しています。内容は「事例検討」「認知症ケア」「高齢者の虐待について」など、担当のスタッフが毎週企画しています。
外部講師にも依頼して「ドレッシング剤について」「人工呼吸器の種類」などをテーマに勉強会をしたこともあります。
知識とスキルの向上のためにも、勉強会には力を入れています。
患者さんの願いを叶えられなかった経験から今がある
病院だといろいろ制限があって、「食べたい」という希望があっても、患者さんの状態を考えたら食べさせられないと判断されることもたくさんあります。
患者さんの希望が叶えられずそのままお看取りをしたときに「自宅だったらできたのにな」という想いを経験したことがありました。
病院での経験が、訪問看護という選択肢を知り、患者さんに寄り添うケアの可能性を感じるきっかけになりましたね。
たとえば、終末期の利用者さんで「◯◯が食べたい」「外に出たい」という希望をお持ちの方のサポートをしたことがあります。
嚥下機能の低下が著しい方だったので、食べるのはちょっと難しいかなと思っていたんです。でも、看護師としては「食べたい」を叶えてあげたくて、リハビリスタッフに相談しました。それで言語聴覚士との訓練の結果、ちょっとプリンが食べられたんです。
他にも、一瞬でしたが外に出て、近所の人に会うこともできました。
このサポートは、ステーション内にリハビリスタッフがいたから叶えられたことです。みんなで利用者さんの希望を叶えられたことが本当に嬉しかったですね。
病院に勤めていた頃には新型コロナウイルス感染症の流行もあって、利用者さんの希望を叶えてあげることが難しかったんです。
ご家族に家で看取りたいと言われても退院させてあげられず、そのまま病院でお看取りすることもありました。すごく悔いが残っています。
その経験もあって、利用者さんの願いをできるだけ叶えられるように看護とリハビリで連携してサポートしていきたいと思っています。
働きやすい職場づくり「スタッフの強みを活かせる役割を」
当ステーションは、看護師をはじめ、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が在籍しています。
管理者として職場づくりで心がけていることは「スタッフの強みを見つける」ことです。たとえば、事業所内の勉強会は「教育担当」のスタッフが企画・実施していますが、その担当決めは「この人にはこんな良いところがあるから」と主任やマネージャーと相談して適任者を決めています。
「教育担当」のほかにも「営業担当」「SNS担当」などがあるんですよ。
地域に密着したステーションでありたいという願いから、地域に出向いて顔を覚えてもらったり、SNSを活用してリハビリの様子を掲載させてもらったりしています。
スタッフ全員が何らかの役割を持つようにしていて、キャリアアップのひとつともいえますね。キャリアアップというと「リーダー」や「主任」などが思い浮かぶと思いますが、ここではそれ以外の選択肢もある。役割を持つことでモチベーションアップにもつながると思っています。
私は時々、スタッフの訪問に同行させてもらうんです。そこでスタッフと利用者さんのコミュニケーションをみて「素敵だな」と思ったところは必ずフィードバックしています。
月1回のモニタリングのため私のみで訪問したときには「スタッフの〇〇さんどう?」「リハビリで何かしてほしいことがある?」など利用者さんに聞いて、スタッフと利用者さんをつなげられるように心がけています。
うちのスタッフはみんな良いところをたくさん持っているので、もっと伸ばしてあげたいんです。20代で3年目のスタッフなんて、まだまだ伸びしろがありますよ。
利用者さんの「住み慣れた自宅で過ごしたい」を叶えたい
今後の展望として「家で生活できる人をもっと増やしたい」というのがあります。
家に帰りたいのに帰れない事情がある方もいるかもしれませんが「家に帰りたい」という想いの方には、その人らしく家で生活できるようにサポートしたいです。
「病院じゃなくても家で過ごせるよ」ということをもっと広く知ってもらえたらと思います。
自宅での生活で、ご家族のサポートがある方もいれば、独居の方もいますが、皆さん不安だと思うんですよね。自宅で過ごせるのはうれしいけど「明日や1時間後にはどうなるかわからない」という不安を抱えている方もいると思うんです。
そこを私たち訪問看護が「こういうときはこういう対応をしたらいいよ」とか「何かあったら連絡してね」としっかり伝えてサポートしていきたいと思っています。
利用者さんのご家族に対しても、不安を軽減できる関わりを大切にしています。ご家族は「自分たちだけで頑張らなくちゃ」と介護の負担を抱え込みがちです。ご家族が倒れてしまっては利用者さんもつらいので、ご家族にも「自分たちだけじゃないんだよ」「サポートする人がたくさんいるから頼っていいんだよ」というのを伝えていきたいですね。
ただ、まだ関わり始めのころには信頼関係も十分に築けていないから、言い出しにくい方もいると思います。なので、私はこまめに連絡をとることを意識しています。自分ごとに置き換えて考えてみると「不安だろうな」と思うんですよね。「自分だったらこうしてほしい」というのを考えながら行動しています。
インタビュアーより
「利用者さんと笑うことを心がけている」と話す酒井さん。
自身の経験を通して、利用者さんやご家族に寄り添い、信頼関係を築くことを大切にされています。
訪問同行やコミュニケーションを通じてスタッフの強みを見極め、良いところを伸ばそうとする姿勢は、スタッフからみても心強い存在でしょう。
インタビュアーの話も笑顔で受け止めてくださり、とても楽しい時間を過ごさせていただきました!
事業所概要
訪問看護ステーション コネクトひらかた(大阪府枚方市)
住所:〒573-1191 大阪府枚方市新町1-6-21 モリビル枚方101号室
運営方針・理念:介護する側、される側、双方の視点に立って在宅生活を提供いたします。
看護師とリハビリテーションスタッフとの連携、また他職種との連携も大切にし、利用者様、家族様が安心して過ごせる様最適なサービスの提供をいたします。
「NsPace Career ナビ」は、訪問看護ステーションへの転職に特化した求人サイト「NsPace Career」が運営するメディアです。訪問看護業界へのキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。